もう少し先になりそうですが、クルマの自動運転を実現する道筋が見えてきました。トヨタ自動車や米GM社、ドイツVolkswagen社の世界市場の上位3社に加えて、ソフトウエア業界大手の米Google社が開発に力を入れています。最近各社が開発に本腰を入れ始めたのにはもちろん理由があります。それが、“インフラに頼らない自動運転技術”にメドが立ってきたこと。「日経Automotive Technology」誌の2013年3月号の特集「自動運転、世界で開発競争」に詳しく書きましたので、本欄ではその内容をかいつまんで紹介します。

 自動運転車の実現で最も重要な技術が、走行中に自車の位置を正確に推定することです。これまでの多くの自動車関連メーカーや大学の研究では、例えば道路へのマーカの設置やGPS(Global Positioning System)の精度を高めることなど、インフラの変更を前提としていました。しかし道路やGPS衛星の変更には巨額の資金が必要なうえ、公共物なので一企業では進められません。結局、研究した成果は“お蔵入り”するしかありませんでした。

 ところが最近各社が開発を進める自動運転技術は、インフラの変更が不要なのが大きな特徴になっています。そのカギを握るのが3次元地図情報です。

 各社の実験車を見ると、特徴的な形の同じセンサが載っています。それが、米Velodyne社が開発する円筒形のレーザレーダ。車両の屋根に載せて回すことで周囲360度、垂直視野約27度の3次元空間にある物体との距離を測れます。各社は同センサであらかじめ街の構造を正確に測定し、その情報を基に作成した3次元地図データと、走行中に同センサを含む各種のセンサで測った情報と照合することで自車位置を正確に推定しているのです。事前に地図を作る手間がかかりますが、基本的にインフラを変更する必要はありません。

 自動車開発と無縁に思えるGoogle社が、自動運転技術の開発に力を注ぐ理由の一つはこの3次元地図情報にあります。同社は「Google Maps」をはじめとした地図情報サービスに力を注いでおり、自動運転に必要な地図情報を作ることは同社のサービスを格段に充実することにつながるのです。しかもGoogle社には「Street View」と呼ぶ地図サービスがあり、センサ(この場合はカメラ)を積んだクルマを走り回らせて地図情報を作ることはこれまでに経験済みです。