2013年1月24日、トヨタ自動車とドイツBMW社が燃料電池車(FCV)を共同開発することで正式に合意しました。さらに、その4日後の1月28日には、日産自動車とドイツDaimler社、米Ford Motor社がFCVの開発で提携しました(関連記事)。

 トヨタ自動車は2015年までにFCVの量販車を単独で市場投入するとしていますが、トヨタ自動車とBMWの共同開発車は2020年の発売を目指しています。一方、日産-Daimler-Ford連合は、2017年にFCVの量産を開始する予定です。2017年に発売するというのは、米国カリフォルニア州の燃費規制が2018年型の新車販売から大幅に強化されることに対応するものとみられます。この他、ホンダや米General Motors社、韓国Hyundai Motor社もFCVに力を入れており、2015~2017年に量販車を市場導入するようです。

 大手自動車メーカーがFCVへの取り組みを本格化させてきましたが、コスト削減は尽きることがありません。特に、燃料電池スタックや燃料タンクの製造コスト削減は道半ばであり、燃料電池スタックでは白金触媒の使用量削減、燃料タンクでは炭素繊維強化樹脂(CFRP)の価格低減などが引き続き、大きな課題として残っています。

 この他の部品では、ハイブリッド車(HEV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)との共有化がカギを握っています。モータや電池、インバータ、電動車両用のエアコンやブレーキ・システムなどを共有化することで、コスト削減を図ることができます。

 このうち、電池の進化は今後のFCVの方向性を変える可能性があります。EVでは電池そのものの性能で航続距離が決まってしまいますが、FCVでも電池を搭載していますので、その進化によってFCVの仕様にも大きな影響を与えるからです。2015年ごろから登場するFCVのうち、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車が開発しているものは、エンジンの代わりに燃料電池を搭載したHEV的な車両となりそうです。そのため、電池の容量はおそらく1kWh以下と少なく抑えられるでしょう。

 しかしながら、電池がより進化すれば、FCVもPHEVのように多様化するかもしれません。PHEVでは、HEVの電池容量を増やして、充電可能とした方式と、EV的な位置付けでエンジンを発電機として利用する方式があります。FCVでも燃料電池スタックをメインとして利用するのか、それとも“レンジエクステンダー”として補助的に利用するのか、今後の電池の進化がその方向性を握っているわけです。

 ここからは宣伝となりますが、日経エレクトロニクスでは2013年2月28日にセミナー「次世代電池の開発最前線 2013~次世代電極から全固体、有機、ナトリウムイオン電池まで~」を開催いたします。次世代電池として研究が活発化しているLi金属電池や全固体電池、Li空気電池、有機電池、Naイオン電池をはじめ、Liイオン2次電池の次世代電極として期待されている固溶体系(Li過剰型)正極材料や合金負極などについて、最前線で活躍する講師の方々に講演していただきます。ご興味のある方はぜひご参加ください。