このようなことがあって、わが家のテレビはソニーのWEGAになった。ところが、何度目かの年男を迎えた今年、いよいよ老眼が進行したのか、ソニーの誇るフルフラットのトリニトロンをもってしても、映画の字幕が見にくくなってきた。液晶テレビだと違うかなと思い、家電量販店で見比べてみたところ、わが家と同サイズの28型では液晶でもやはり字幕が見にくく、42型以上になるとクリアに読めるようになることが分かった。

 ここはぜひ、42型のテレビに買い替えたいところ。故障したわけでもないわが家のWEGAを大家が買い替えてくれるとは思えないが、自分で買って、WEGAを大家に引き取ってもらえばいい。

 時は今年の1月。ちょうど春節(旧正月)のバーゲンの時期で、家電を買うには絶好のタイミングだ。「今年の春節は、家にこもって新しいテレビで映画三昧だ」と決め、売り場やネットであれこれ物色していたところに飛び込んで来たのが、「フォックスコンの60型テレビが中国でも発売される」というニュースだった。

 EMS(電子機器受託生産)世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、シャープと共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP、旧シャープ堺工場)の第10世代ラインの稼働率を引き上げ、そこで生産する大型液晶パネルをさばく方策として、自社で組み立てた60型の大型テレビを独自ブランドで売り出すのではないかという観測が浮上したのは、2012年7月のこと。当コラムでも「60型で10万円? 鴻海ブランド激安テレビの衝撃」の回で紹介した。

 その後、SDPで生産したパネルを利用した60型テレビはまず、液晶テレビの受託生産で知られる台湾AmTRAN社(瑞軒)が傘下に収める液晶テレビメーカーの米VIZIO社が2012年10月に北米で発売した。同社ウェブサイトによると、価格は2013年1月末現在、899米ドルだ。低価格を武器に感謝祭やクリスマスなど2012年の年末商戦を中心に売れ行きは好調だったようで、台湾紙『経済日報』(同年12月12日付)によると、VIZIO社の王蔚・最高経営責任者(CEO)は、「北米市場の12年感謝祭商戦における55型以上の大型テレビシェアでVIZIO社は韓国Samsung Electronics社やシャープ、ソニー、韓国LG Electronics社を抑えて首位だった」と話している。

 その後、フォックスコンはお膝元の台湾でも同年11月、CATV業者の台湾Kbro社(凱擘)、通信キャリアの台湾Chunghwa Telecom社(中華電信)のコンテンツと抱き合わせの形で、60型テレビの販売を開始した。ブランド名は付けず、価格は3万8800新台湾(NT)ドル(1NTドル=約3.1円)。発売後10日間の注文台数が1000台を超え、事前の予想を上回るなどやはり販売は好調。台湾各紙によると、フォックスコンでは、台湾販売分の組み立てを行っている台湾新北市土城にある工場で人員を増員、月産も1万5000台に引き上げたようだ。