アナログ半導体への注目度が高まっている。スマートグリッドや電気自動車、パーソナル・ヘルスケアといった、アナログ技術がカギを握る応用例が相次ぎ登場しているからだ。
 アナログ業界はこの先どこへ向かうのか。大震災を経験した日本をどう見ているのか。業界の重鎮であるAnalog Devices社の創業者で会長のRay Stata氏に、東日本大震災から程なく聞いたインタビューを2回にわたって紹介する。(聞き手は田野倉 保雄=日経エレクトロニクス編集長(当時)、大下 淳一)

Ray Stata 米Massachusetts Institute of Technology (MIT)在学時の同級生だったMatthew Lorber氏と共同で、 1965年にAnalog Devices社を設立。1971~1991年に同社 President、1973~1996年にCEOを歴任。会長職は1973年から務める。教育や連邦政府関係の活動にも積極的に携わっている。(写真:栗原 克己)

─Analog Devices社の創業から半世紀もの間、アナログ業界に身を置いてこられました。昨今のアナログ業界をどのように見ていますか。

 大きく二つのトレンドがあると感じています。一つは、アナログ分野における技術進化が、よりシステム志向になっていることです。通信やコンピューティング、信号処理などの技術を統合して、顧客のシステムに合わせたソリューションを構築する。こうした手法の重要性が高まっています。これに伴い、我々のようなアナログ半導体メーカーは、部品メーカーからソリューション・ベンダーへと変化する必要に迫られています。

 もう一つは、アナログの技術革新に再び光が当たっていることでしょう。半導体業界はここ30~40年間、「ムーアの法則」に沿うデジタル半導体の技術革新にもっぱら力を入れてきました。これに対して、アナログ半導体では、際立って大きな技術革新は起きなかった。この結果、現在では多くの用途で、アナログ技術が高度なソリューションを構築する際のボトルネックになっています。逆に言えば、今後は多くの分野において、アナログ技術がシステムの進化を牽引すべきなのです。