新しい産業として大きなポテンシャルを持つスマートシティは、2012年、産業化に向けて大きく進展した。日経BPクリーンテック研究所ではスマートシティに関する動向を本コラムで紹介してきた。2012年の動きを10大ニュースの体裁でまとめたのが表1である。そして2013年はどのような方向に向かうのか。実証事業がいよいよ社会に実装されるにあたり、企業・市民・自治体が一体となった「シティイノベーション」が求められるようになる。

表1●2012年のスマートシティ10大ニュース
(1)北九州市の「ダイナミックプライシング」など、デマンドレスポンス(DR、需要応答)の実証実験が各地で成果
(2)固定価格買取制度(FIT)が日本でもスタート
(3)笹子トンネルで天井崩落事故インフラ老朽化が喫緊の課題に
(4)カーシェアなどシェアリング・ビジネスが欧米で活況
(5)ISO(国際標準化機構)のスマートシティ標準化で日本がリーダーシップ
(6)欧米でクリーンテック関連ベンチャーが破綻
(7)家庭向け蓄電池が立ち上がる
(8)東京電力がスマートメーター仕様をオープンベースに転換
(9)ハードウエアからサービスへの流れが顕在化
(10)米GEが「インダストリアル・インターネット」構想を開示
次点EV(電気自動車)市場が想定通りに立ち上がらず

 2012年を振り返って最も重要な動きといえるのが、実証実験で数々の成果が出てきたことだ(1位)。横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市の4地域で繰り広げられている実証実験は海外から見ても評価は高い。地域節電所の効果が現れ、デマンドレスポンス(DR)、ピークカットで価値のあるデータが得られ始めている(図1)。

図1●北九州市に開設された、デマンドレスポンスの中核を担うCEMS(地域エネルギー・マネジメント・システム)センターである「地域節電所」。地域全体のエネルギーの需給最適化を図る
図1●北九州市に開設された、デマンドレスポンスの中核を担うCEMS(地域エネルギー・マネジメント・システム)センターである「地域節電所」。地域全体のエネルギーの需給最適化を図る

 例えば電気料金を系統網の需給状況に合わせて臨機応変に変える「ダイナミックプライシング」では、夏のピーク需要時に25%の節電効果を達成したといった成果も出てきた。実証実験からは価格変動に対して需要家がどのような行動を起こすのかについて、次々と新しいデータや知見が蓄積されつつある。