XVLを使うと、定義された工程から自動的に作業指示書を作成することもできる。XVLには「どの工程で、どの部品を、何個利用するのか」といった情報が全て含まれているので、これを表計算ツール「Excel」のセルに自動で貼り付ければ、作業指示書は簡単に完成する。Excel内で部品名称を指示すれば該当する3Dモデルをハイライト表示できるし、「スナップショット」と呼ばれる2D画像をクリックして、その状態を3Dモデルで再現させることもできる。見たい、あるいは見せたい場面をスナップショットで保存・再利用し、現場向けの的確な作業指示書を作成できる(図3)。

図3●Excelベースの作業指示書
図3●Excelベースの作業指示書
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 どこの職場でも大きな変化は嫌がられるものだが、このExcel帳票は従来の形式を継承するスタイルだったため、現場にもスムーズに受け入れられた。業務の進め方を一気に変化させるような手法だったら、現場は拒否したかもしれない。見かけをExcelという形に据え置くことで、本質である「工程設計の進め方を大幅に変える」という狙いが実現できたのだ。河本氏はこれを、前向きな意味での「ゆでがえる方式」と呼んでいる。現場にはわずかな変化に思えるが、裏側では本質が大きく変わっているのである。

 もう1つの課題「売れるスピードで生産」への対応として、同社では従来のロット生産から1品ごとにラインに流れる機種を変える、多品種混流生産方式に切り替えた。この混流生産における作業指示方法の確立と現場への定着を中心に、同社の作業指示形態はさらに進化しているのである。これに関しては、また別の機会に紹介したい。