米国市場で必要とされる機種を迅速に生産するため、KCM社は部品とモジュールの最適な調達体制をとっている。各モジュールは国内で組み立てられ、米国のKCMA社に輸出される。最終組み立てに必要な部品には、現地で調達する部品と、日本で調達し現地に送付するコンポ部品の2種類があり、KCMA社では輸出されてきたモジュールとコンポ部品、そして現地で調達した部品を組み合わせて最終組み立てを行い、ホイールローダを完成させる(図8)。

図8●KCM社における海外拠点との協調による工程設計プロセス
図8●KCM社における海外拠点との協調による工程設計プロセス
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 そして、KCM社とKCMA社による日米間の情報のやりとりは、3Dモデルと構成情報・組立工程を表現するXVLによって実現されている。実際、XVLで工順を再現するだけで、言語の壁を越えてKCMA社のメンバーへ組立手順を伝えることができるのだ。情報を迅速かつ正確に伝達可能なXVLの特性を最大限に生かし、日米間のコンカレントな工程設計を実現。製造の垂直立ち上げに挑戦しているのである。

 KCM社は、同社の「建機ポータル」(図面や各規格類等の設計情報の検索・閲覧PDM)にXVLを埋め込むことも計画している。これが実現すれば、担当者は自分に関係する工程をクリックするだけで、その工程で使う部品名称、個数、部品番号といった情報を3Dモデルとともに表示できるようになる(図9)。製品全体の3Dモデル表示と、作業で使う部品だけの3Dモデル表示が共に可能になっているので、各作業の内容を直感的に理解できるのだ。将来はさらに、設計変更時に情報を自動更新し、日米間で即座に共有しようという構想もあるという。まさに無駄と手戻りを極限まで排除した、ものづくりを実現しようとしているのである。

図9●KCM社の建機ポータルにXVLを組み込んだイメージ(計画中)
図9●KCM社の建機ポータルにXVLを組み込んだイメージ(計画中)
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 KCM社で推進を担当し、実際に米国拠点の立ち上げにも関わった兼本康生氏はこう語る。「How(組み付け手順)やWhat(部品検索)を素早くビジュアルに再現できるのは、現地での組み立てをアシストする上で極めて有効です。日米のコラボレーションをいとも手軽に実現するXVLは、魔法のツールのようです」。KCM社はXVLの3Dモデルで事前に工程を検証し、それを日米間で共有することで、無駄と手戻りを徹底的に排除し、コストを最小限にした開発と生産体制の構築にまい進している。