KCMにおける海外生産へのものづくりITの適用

 川崎重工業株式会社の建機部門から分社化したKCM(本社兵庫県・稲美町)は、土砂などをダンプカーに積み込む際に使われるホイールローダやその関連製品を主な製品として開発・生産している。海外からの引き合いも多く、米国拠点のKCMA 社では約100名の従業員がホイールローダの製造に従事している。そして、KCM本社とKCMA社との間で工程情報を共有し、迅速な製造立ち上げを行う上で、XVLを使ったものづくりITが貢献している。

 複雑な構造を持ったホイールローダの3D-CADデータは数Gバイトとなり、全体表示すら困難である。そこで3D-CADデータを軽量3Dフォーマット XVLに変換し、組立工程の設計と検証を行っているのだ。しかも、最終の組立は米国のKCMA社が担当するので、その工程設計は米国で行う。このとき活躍するのが、先に説明したXVL Studioが持つ工程設計の分業機能である。

 KCM社の設計部門は、ホイールローダを構成する油圧、電気、制御、機械要素などの機能別に3D-CADで設計する。機械要素としては、例えばトランスミッション(変速機)やアクスル(車軸)などがある。生産技術部門は、XVLに変換された3DモデルからXVL Studioにより製造単位であるモジュールを決めていく。ここでは「組み立てやすいか」「部品が調達しやすいか」「コンテナ輸送は効率的か」といった観点でモジュールを構成していくのだ。目指すはトータルコストの低減である。このようにしてモジュール構成作業を進めていくことで組み立ての順序も決まり、工程の設計が完了する。まさにコンカレント作業である。

 米国KCMA社は、複数のモジュールを組み上げて最終製品を完成させる役割を担っている。このような海外での組立作業をいかに簡単、迅速に実施できるかは、各々のモジュールがいかに簡単に合体できるものになっているかに依存している。そのためモジュール構成の作業は、トータルコストの低減と最終組み立ての容易性の双方に目配りしなければならない。

 そこで威力を発揮するのがXVL Studioである。XVLで見える化された設計・工程情報のやりとりが、早い段階での設計へのフィードバックを可能にするのだ。これまで製造現場で起こっていた問題を設計段階で解決する、フロントローディングが実践できるのである。