日本の製造業は、マーケティング、設計、製造、営業、保守といった様々な部門が同じ会社の中に垂直統合され、「総合力が強み」と言われてきましたが、果たして本当にそうでしょうか。

 同じ会社の中に、様々な機能があったとしても、各部門がバラバラに動いていたのでは、意味がありません。設計と製造を分離した「水平分業」構造で、それぞれの分野に特化した海外の専業メーカーに対して、最近の日本メーカーは、分が悪い状態が続いています。

 しかし、水平分業だからと言って、分野間の擦り合わせが不要なわけではありません。例えば半導体では、大手のファブレス設計専業メーカーが、デバイスやプロセスの技術者を数多く抱え、製造を行うファンドリと協力して、設計と製造の全体を最適化していることは良く知られています。

 日本の製造業が苦境に立っているのは、設計、製造、営業、保守など、様々な部門を自社に統合しているからと言うよりも、様々な部門の擦り合わせが足りないからではないでしょうか。各部門の中でバラバラに最適化しているために、垂直統合の強みが生かし切れていない。

 部門間の連携をはかるカギは、データの活用にあります。マーケティング部門は将来の市場のデータ、設計部門は設計図のデータ、製造部門は製造装置の状態を表すデータから、歩留まり、スループット、製造量などのデータ、営業部門は顧客データや販売価格、販売量、ライバル企業の販売データ、保守部門は市場での不良のデータなどを持っています。

 これらの製品に関するデータは、製造装置の状況や、市場動向などに応じて時々刻々変化する「ビッグデータ」。本来はデータをフルに活用することで、市場の状況に最適な製品を設計したり、製造量を調整すべきですが、実際に、企業の中でできているのでしょうか。

 コストに関しても、歩留まりやスループットといった製造の状態を反映して、最適な製品が設計されることが望ましいですが、十分に行われているでしょうか。DFM(Design for Manufacturability)と言われるように、製造の歩留まりを考慮した設計の重要性が強調されていますが、設計部門には生々しい製造の情報がリアルタイムに提供されているのでしょうか。