日米中の商品開発志向
商品開発の思考回路は、拡大志向のアメリカ、詰め込み志向の日本、「模倣+機能増減」志向の中国とそれぞれ違う。その裏には、生活習慣やビジネス文化の違いが潜んでいるのだ。下の表に、弁当やプレゼン資料の作り方、携帯電話機の開発、および商品開発における3カ国の方向性の違いをまとめてみた。
  | 日本 | 米国 | 中国 |
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弁当の作り方 | ●その日に作り上げる ●おかずごとにきちん分別 | ●家庭料理の延長 ●残り物を詰め込む | ●おかずごとに分けない ●適当に詰め込む |
プレゼン資料の作り方 | ●細かい情報まで記載 ●図や絵も多い | ●箇条書きが多い ●1スライド、1枚写真 | ●特徴が目立たない ●日米の特徴を両方持つ |
携帯電話機の開発 | ●高性能を追求 ●関連のない機能の詰め込み | ●固定電話の延長 ●パソコンの延長 | ●模倣 ●安さ |
商品開発 | ●機能をきちんと詰め込む ●開発者自己満足傾向 | ●論理展開で機能追加 ●シンプル・イズ・ベスト | ●ユーザー目線が強い ●形や手段を問わず |
極端に言い方をすれば、日本での携帯電話機やカーナビゲーション・システム(カーナビ)などに多く見られる電気製品の機能の詰め込みは、ハードウエアを中心に高機能や高性能を追求したものであり、必ずしも機能の論理的な展開が十分になされたものとは言い難い。それに対して、欧米はトータルデザインを重視する。故に、パソコン化して、パソコンを超えない電話機能のあるBlackBerryが生み出されたのではないだろうか。そして、その延長線として、ハードウエアとソフトウエアを両方重視する米国から、現在世界を席巻しているスマートフォンが生み出され、携帯電話機市場においてイノベーションを巻き起こした。
一方、中国発の「山寨携帯」は、「模倣」を中心にあらゆる手段で市場のニーズをつかみ、いち早く市場に投入された。安さとスピードで、新興国市場においては、日米韓などの海外メーカーとの対抗を可能としたのだ。スマホの時代でも、「小米」(「小米」というスマートフォン)で代表される中国メーカーは、いち早くキャッチアップして、ユーザー参加型の開発、ソーシャルネットワーク活用による販促など革新的なマーケティング手法により、中国市場ではApple社や韓国Samsung Electronics社などの強豪からパイを奪った。
このように、思考回路と商品開発の方向性は密接に関連している。さらに考察すれば、それらは、職人の日本、商人の中国、イノベーターの米国といった国民性(「職人」「商人」、そして「イノベーター」)とも関係するだろう。今後、そういった違う思考回路や国民性はグローバル化の波に乗って、入り交じり、互いに影響し合うことで、新たな製品や文化を生み出していくだろう。