現在は米Apple社の「iPhone」の人気と影響で3カ国の携帯電話機市場は基本機能がかなり似通ったスマートフォンに支配されているが、2年ほど前までは、3カ国の携帯電話機市場はそれぞれに特色を持っていた。

多機能化、複合化した日本のケータイ
 日本の携帯電話機は、カメラ機能、財布機能、「デコメール」(または「デコレーションメール」「デコレメール」など)、ゲーム、テレビなど、多機能化とその機能の複合化により、電話機の枠を大きく超えていた。それは、携帯電話機ではなく、「ケータイ」と呼ばれるにふさわしい新しいモノとして進化を遂げていた。つまり、携帯型の電話機という意味合いを超えている「ケータイ」という新製品だ。ちょうど詰め込み型の弁当とそっくり、弁当の元々の目的から離れて、手間がかかる新たな食文化へ発展したことと同じだ。日本式の弁当は日本にしかないのと同じように、日本のケータイは「ガラケイ」とも言われてほとんど日本に留まった。

パソコンの延長となる米国のスマホ
 日本のガラケイが最盛期の時、米国で流行っていたのは、「Blackberry」に代表されるPDA(Personal Digital Assistants)とApple社のiPhoneだ。Blackberryは、小さいキーボードも付いて、携帯型のパソコンともいえる。その発想はパソコンの延長線上にある。iPhoneも、パソコンやインターネットとの連動を前提にしており、パソコンにおける単機能の追加による機能拡張と同じ発想なのである。

「模倣+機能増減」の中国の「山寨携帯」
 日本のガラケイが最盛期の時、中国で注目されていたのは、中国で生まれた「山寨携帯」(中国語で模倣携帯電話機のこと)だ。
 「山寨携帯」は、中国を越えて、インドや中東などの新興国の携帯電話機市場を大きく揺るがした。「山寨携帯」が生まれた経緯は、このコラムの他の記事を含めて日本でも大きく取り上げられて、詳しく紹介されていた。それが模擬品そのものだという批判があると同時に、「山寨携帯」は低収入者のニーズを満たしたという評価もある。いずれにしても、人気が高い秘密は、値段がはるかに安い機種が多いことだ。また、100%模倣ではなく、多数ある機能の中で何を取捨選択するのかというところに「改良」がある。例えば、中国で人気のあるインスタント・メッセンジャー・サービス「QQ」の導入や多彩な外観デザインなど、機能面では、海外の有名ブランドと比べてより本土のニーズをつかんでいるケースも少なくない。
 このような「山寨携帯」の現象は、弁当やプレゼン資料から見られるように、「形」や「手段」にそれほどこだわらない、実用主義を重視する中国の文化と関連しているだろう。近年、数多くの中国メーカーは、技術の蓄積によって、ローエンドからハイエンドへの戦略の転換を果たしてきており、「山寨携帯」もかなり少なくなってきているが消えたわけではない。「山寨iPhone」の形で依然存在している。