弁当、プレゼン資料、そして携帯電話機は一見全く関係ないように見えるが、実は奥深いところに共通していることがあると考えた。今回は中国に限らずに、弁当の作り方、プレゼン資料の作成、携帯電話機の機能といった視点で、中国、日本、米国という3カ国の国民の思考回路の違い、さらにイノベーションとの関連性について考察する。

まったく違う3カ国の弁当

 調理済みの食品を携帯することは世界中にあるが、日本は他の国では類を見ないほど普及している。弁当は、食事を持参するという枠を超え、1つの新たな食文化を形成するまでに発展を遂げている。

 実際日本の家庭での手作り弁当へのこだわりは、弁当の中身となるおかずだけでなく、弁当箱、おかずを入れる紙ケース、弁当の作り方を紹介する本やテレビ番組、弁当箱を包むものなど多岐にわたっている。中でも一番感心したのは、決められた枠となる弁当箱に、サラダやデザートを含め色とりどりの多種類の料理を詰め込んでいくことだ。弁当の元々の目的から、簡単に作ることができ、かつ食べやすい料理が本来求められるべきところだが、なぜか日本では新しいジャンルの料理にまで発展してきている。これは、境界を定め、その枠内で精緻化し、深化させていく日本人らしい発想とも考えられるだろう。

 一方、中国では、調理済みの料理を持参するものは「便当」と言われている。中国の学校では、弁当を食べる習慣がない。いざ遠足となった場合も、家庭で作られた弁当は、日本と比べて相当シンプルのものが多く、残り物を活用するぐらいだ。確かに中国は近年、経済発展によってライフスタイルも変わってきている。通勤時間は長くなり、昼休みは短くなる傾向で、ビジネス街では昼食の時間になるとどの料理店も込んでいる。結果、ビジネスマンの昼食としての弁当を売る店が増えている。ただし、そうした弁当は、日本のどんぶり物のようにご飯の上におかずを載せたものが多い。載せてあるのは1種類のおかずではなく、複数のおかずが適当に載せられている。しかも、日本の弁当と違って、異なるおかずがきちんと仕切られているわけでもない。それでも中国人は気にせず、平気で食べている。要するに、消化してしまえば同じなので、わざわざ時間と手間をかけて、分ける必要はないと思う人が多いのだ。

 米国の弁当については、筆者の米国での滞在経験からいえば、せいぜい、日本の「楽チン弁当」のレベルだ。シンプルなサンドイッチ、パン、ゆで卵、冷たいピザを持ってくる人が多い。つまり、工夫が感じられず、家庭料理の延長で、前日の料理の余り物のような感じだ。