弁当と似ているプレゼン資料

 国際会議やビジネスの商談において、パワーポイントで作った日本人発表者のプレゼン資料は、アメリカの発表者の資料と比べると、一目瞭然でスタイルが違う。日本人は、1枚のスライドにたくさんの内容を詰め込み、上から下まで、左から右まで、文字、図、絵、写真がびっしり並んでいて、色付けも豊富なことが多い。まるでたくさんのおかずが入った弁当のように多くの情報が詰め込まれている。しかし、弁当箱のふたを開けた瞬間、どのおかずを取ろうかといつも迷うように、1枚のスライドに詰められた文字、絵、図の中でどれに目を付けてよいか分らなくなり、かえって混乱させられるときも少なくない。そのようなプレゼン資料は、聞くより、むしろ読むものとして適切かもしれない。

 米国人が作ったスライドはこれと好対照で非常に単純明快だ。ほとんどが箇条書きで、言いたいことがストレートに表現されている。まるで欧米式の弁当の代表であるサンドイッチのようにシンプルではっきりだ。思いや考えを全て伝えるために、長々と書き込むことが必ずしもいいわけではない。かえって言いたいことが分かりにくくなり、メッセージが伝わりにくくなる可能性が高い。「シンプル」に表現することは、「分かりやすさ」につながるのだ。

 これに対して、中国人のプレゼン資料のスタイルはまだそれほど明確に確立されていない。1つのプレゼン資料に、日本式や米国式が織り交ぜられているように見える。中国でプレゼン資料を作る習慣が始まったのが欧米や日本よりも遅いためだろう。中国では、日本式と違って特にスライドの「形」や「スタイル」にこだわらないと感じられる。米国文化の影響が強い中国では、今後、米国人のプレゼン資料のスタイルと近くなる可能性が高い。

携帯電話機の違いとは

 弁当とプレゼン資料の作り方から、日本/米国/中国の人々の思考回路がそれぞれ違うことが分かったことだろう。その特徴は実際の商品機能設計においても反映されると見られる。以下、携帯電話機を例として考えてみよう。

 世界中に普及している携帯電話機は、国により発展のスピード、進化のプロセスに差異が見られるが、機能がどんどん追加されていくという点ではどの国でも同じである。ただ、機能の追加に対しては、国により発想の方向性に違いが見受けられる。