フィーチャを活用したデータ

 以下、幾つかのCADを見ていく。「Solid Edge」(米Siemens PLMSoftware社)の板金部品設計機能は、直観的な操作に特徴がある。

 Solid Edgeの板金部品モデルは、穴や曲げ、切り欠きを「フィーチャ(形状特徴)」で表現している。フィーチャは意味を持った部分図形で、例えば穴ならば径、曲げならば曲げ部分の幅と曲げの径、といった、フィーチャの種類に応じた固有の情報を持つ。板金部品専用の、ガセット(小さな三角リブ)やルーバ(空気抜き穴)といったフィーチャもある(図2)。

図2(a)●Solid Edgeの板金部品用フィーチャの例
図2(b)●Solid Edgeの板金部品用フィーチャの例
図2●Solid Edgeの板金部品用フィーチャの例
(a)が三角リブ、(b)がルーバ(通気口によく用いられる穴形状)。
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 フィーチャは他のCADにもあるが、Solid Edgeの場合はフィーチャがそれぞれ独立しており、これが直観的な操作につながる(図3*1。その裏返しとして、フィーチャ同士の連携性はあまり重視していない。CADでは一般に、ヒストリによってフィーチャ同士の関係を拘束して連携させることも多いが、「板金部品ではヒストリを使わず、個別のフィーチャを直接編集する方が実用的」(シーメンスPLMソフトウェア)としている。

図3●Solid Edgeの板金部品モデルの特徴
図3●Solid Edgeの板金部品モデルの特徴
多くのフィーチャが並列に存在しており、それぞれのフィーチャの関連が薄い。Solid Edgeの場合は、フィーチャをそれぞれ独立に編集できることに重点を置いている。
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*1 Siemens PLM Software社はSynchronous Technologyと呼ぶ。SolidEdgeの板金部品設計機能も、通常機能と同様に、フィーチャ同士をヒストリで関連付けることも可能である。

 ヒストリはフィーチャの組み立て順を記録しておき、フィーチャ相互の連携を制御するのに役立つが、板金部品の場合は「フィーチャ同士を連携させる必要がほとんどない」(同)。「例えば、隣り合う穴の大きさが互いに連係して決まっていることは、多くはない」(同)。

 Solid Edgeの板金機能は開発当初、ヒストリベースのパラメトリック機能に基づくものだった。Siemens PLM社は数年前からヒストリを経由しない「Synchronous Technology」による機能を増やしている。Soid Edge本体にSynchronous Technologyを搭載するのと並行して開発を進めている。

 日本国内では、板金機能の利用者の比率は海外よりも多いという。そのため、前述の三角リブのフィーチャなど、日本国内からの要求によって実装した機能がある。板金部品モデルをParasolid形式などの外部ファイルに出力するとき、曲げの内側に微小なRができてしまう場合があり、データを受け取ったソフトで不具合を起こすことがある。そこで、この微小なRを除去する機能があるが、これも日本からの要望が基になっているという。

 板金部品モデルを基に加工データを作成するCAMの中で、Solid Edgeに直接組み込んで動作するものがある。その1つが「MAC sheetSEG5 」〔キャドマック(本社東京)〕だ。他のCADからもデータを読み込んでSolid Edgeの板金部品モデルとし、加工データを作成できる。

 CAEとの連携では、板金モデルから自動的に中立面を抽出したシェルモデルを作成する機能がある。