集まる部品,進む試作

「これでどうやろか」

「こんなん入るわけないやろ」

 このころ,岩崎が担当する周辺回路だけでなく,多くの部品が姿を現しつつあった。光ピックアップとその位置決め機構,スピンドル・モータ,電子回路…。量産品としての完成度はまだまだだったが,内部に組み込む形の部品はそろい,製品と同じ大きさの試作機を組み上げる作業が始まっていた。

「この大きさの筐体に部品がほんまに入るんやろかとかなり心配していたんですが,開発部隊はすぐに収めましたね。そこは結構簡単にできたんじゃないですか」

 こう四角は振り返る。しかし,現場の実態はかなり違っていたようだ。開発現場を指揮していた倉橋章は笑いながらこう話す。

「四角さんが『詰めてくれと言ったら,簡単に詰めた』と言ったのは,お世辞でしょうね。詰めるのは結構大変でしたから。正直言って,大きさを見て最初は尻込みしましたよ。でも『できません』と言ったら,どやされたやろうし」

姿を現した携帯型DVDプレーヤ<br>1997年秋に入ると,製品にかなり近い形で携帯型DVDプレーヤの試作ができるようになっていた。しかし,同10月に量産開始という目標は達成できなかった。(写真:竹谷嘉子)
姿を現した携帯型DVDプレーヤ
1997年秋に入ると,製品にかなり近い形で携帯型DVDプレーヤの試作ができるようになっていた。しかし,同10月に量産開始という目標は達成できなかった。(写真:竹谷嘉子)
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 据置型DVDプレーヤの開発で悩まされたLSIのバグも,携帯型DVDプレーヤではほとんど問題にならなかったようだ。ただ,試作は順調に進んだものの,当初予定していた期限からはだいぶ遅れていた。このころには既に,この年の10月に予定していた量産出荷開始を延期する決定がなされている