Light DMUで擦り合わせ設計を支援する

 設計部門と生産技術部門が、早い段階で設計モデルと工程を擦り合わせることができれば、製造工程で起こっていた問題も設計段階で修正できる。設計モデルの品質が高くなれば、製造工程で発生していた余計なコストが削減できるし、工程設計も早い段階で完了しているので工場立ち上げにも有効だろう。

 これを支援するのがデジタルモデルを使った工程設計と、その工程を検証するデジタル・エンジニアリング・ツールである。このツールは一般的に「DMU」(Digital MockUp)と呼ばれる。設計部門が利用する3D-CADは製品の構成と各部品の形状を決定するツールであり、曲面データを数学的に精密に保持する上、設計の履歴情報も持つため、データは巨大なものとなる。従って、この3D-CADで最終組み立てまでのデータを定義し検証するのは現実的とはいえない。そこで3D-CADデータを軽量化したデジタルモデルを使い、組み立てを検証しようというのがDMUである。

 ところが既存のDMUシステムを調べてみると、[1]データが巨大化し実際の検証の妨げになる。[2]機能が複雑すぎて使いこなせない、[3]ツールが高価なために手軽に適用できない、という3つの大きな問題があることが分かった。特にDMUにおいてデータが巨大になることは、宿命的な問題である。製品全体を組み上げる必要があるので、すべての部品を取りそろえた上で工程を検証しなければならない。

 3D-CADでは、関連する部分を参照しながら自分の設計部品だけを操作対象とすればよいが、DMUは製品全体が操作対象となる。さらに製品のバリエーションまでまとめて検証したいとなると、例えば車の場合でも3D-CADデータは数十Gバイトにもなってしまうのだ。XVLは、このような巨大な情報を扱ってもデータ容量が少なくて済む、超軽量性という特徴を持っているのである。

 DMUの機能を大別すれば、「ビジュアリゼーション」と「シミュレーション」の2つに分けられる。工程順に作業イメージを再現すれば、製造の専門家ならモデルを見るだけでも、その作業に潜む課題が分かる。これがビジュアリゼーションの例である。一方、「作業によって人体にどれだけ負荷がかかるのか」といったことを、システムが数値として計算するエルゴノミクスという機能もある。これがシミュレーションの例だ。

 実は、このシミュレーション機能が、既存のDMUの機能を複雑にし、高額なツールとしていた。ところが実際に幾つかのユーザーを訪問してみると、ほとんどの場合ビジュアリゼーションだけでDMU作業を行っていたのである。シミュレーションを必要としていたのは、特殊な検証や作業を必要とする場面だけで、全体の10%もないという印象を受けた。