間に合わなかったが…

 携帯型プレーヤを実現するため,新しく開発した4つのLSIは,1985年3月に試作版が完成した。

 そして,その年の5月。連休前の開発現場で歓声が上がった。

「やったで。音が鳴った」

「ほんまか」

「早よう,見せてや」

 LSIや回路がほぼ完成し,筐体のデザインが決まり,四角らの携帯型CDプレーヤ開発は長いトンネルを抜けようとしていた。

世界最小を訴えたものの…<br>ソニーの「D―50」から遅れること約9カ月。四角利和氏らが開発した松下電器産業の携帯型CDプレーヤ「CDer」がようやく市場に登場した。ソニーの製品よりも体積比で約2割,重さで70gほど小型軽量。世界最小の製品を開発して意地を見せた。(写真:松下電器産業)
世界最小を訴えたものの…
ソニーの「D―50」から遅れること約9カ月。四角利和氏らが開発した松下電器産業の携帯型CDプレーヤ「CDer」がようやく市場に登場した。ソニーの製品よりも体積比で約2割,重さで70gほど小型軽量。世界最小の製品を開発して意地を見せた。(写真:松下電器産業)

 残念ながら,目標とした1985年6月20日には間に合わず,1カ月遅れで発売することが決まった。同5月下旬には製品発表し,同7月22日の発売日を公にした。その報道発表では,関西の家電の雄として意地を見せた。翌日の新聞には「世界最小・最軽量」という言葉が躍った。

 製品の発表後,開発の最終段階を残すだけとなった四角らの開発チームは,意気揚々と同6月初めに米国シカゴで開催された「夏季CES」に携帯型CDプレーヤを出展した。世界最小のCDプレーヤという勲章を引っ提げて…。