間に合わなかったが…
携帯型プレーヤを実現するため,新しく開発した4つのLSIは,1985年3月に試作版が完成した。
そして,その年の5月。連休前の開発現場で歓声が上がった。
「やったで。音が鳴った」
「ほんまか」
「早よう,見せてや」
LSIや回路がほぼ完成し,筐体のデザインが決まり,四角らの携帯型CDプレーヤ開発は長いトンネルを抜けようとしていた。
残念ながら,目標とした1985年6月20日には間に合わず,1カ月遅れで発売することが決まった。同5月下旬には製品発表し,同7月22日の発売日を公にした。その報道発表では,関西の家電の雄として意地を見せた。翌日の新聞には「世界最小・最軽量」という言葉が躍った。
製品の発表後,開発の最終段階を残すだけとなった四角らの開発チームは,意気揚々と同6月初めに米国シカゴで開催された「夏季CES」に携帯型CDプレーヤを出展した。世界最小のCDプレーヤという勲章を引っ提げて…。