日産 その栄光と屈辱 消された歴史 消せぬ過去、佐藤 正明著、2079円(税込)、421ページ、421ページ、文藝春秋、2012年10月
日産 その栄光と屈辱 消された歴史 消せぬ過去、佐藤 正明著、2079円(税込)、421ページ、421ページ、文藝春秋、2012年10月
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 日産自動車の業績が、フランスRenault社に買収されるまでに悪化した原因は1977年から1985年まで社長を務めた石原俊氏にある―著者はそう分析する。英国進出をはじめとする事業を「狂気の海外プロジェクト」と呼ぶなど手厳しい。

 著者は1973年に日本経済新聞社で自動車担当記者になった。各社の幹部と親交が深いため一次情報を持っており、説得力がある。自動車総連会長の塩路一郎氏のスキャンダルの真相、日産がRenault社と手を組んだときの経緯など、時間をおいてからでないと表に出せない事実が語られる。ノンフィクションとして異例のことだが、著者自身もしばしば登場する。

 残念なことに、このストーリーには商品力、技術力の話が一切出てこない。自動車会社の浮き沈みは工場の建設、会社の買収、社長の人事だけで決まってしまうことになる。経営という点から見ると、それは真実に近いのだろうが、技術に関わっている本誌の読者には違和感があるかもしれない。

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