テレビ60周年記念ドラマ「メイドインジャパン」(NHK総合テレビ)が2013年1月26日(土)の夜9時から毎週土曜日(連続3回)に放映されます。このドラマは、戦後の日本を支えてきたものづくりの意義を問いつつ、逆境を乗り切ろうとする日本人の姿から、「メイドインジャパン」とは何かを正面から見据えて、描いていったものです(NHKの同ドラマ紹介ページ)。実はこのドラマの制作に、Tech-On!コラム「グローバル市場で負けないものづくり」の筆者でフリージャーナリストの井上久男氏が協力しました。そこで、Tech-On!では同氏がどのような思いを込めてドラマの制作に協力したのか、お話をうかがいました。

――「メイドインジャパン」とはどんなドラマですか。

 日本を代表する巨大電機メーカーである「タクミ電機」(架空)の経営が悪化し、メインバンクからも見放されて倒産の危機に陥った中で、社内の異端児7人が再建に向かって奔走する物語です。今の日本のどこかで起きているような現在進行形の話かもしれませんね。

 単純な企業戦士のドラマではなく、会社を取り巻くステークホルダーとして「家族」の存在をストーリーにきっちり絡ませ、そこも描いているドラマだと思います。主人公の離婚問題や、主人公の右腕の人物が、もうすぐ赤ちゃんが生まれる身重の妻から励まされて難局に立ち向かう場面なども盛り込まれています。

 異端児7人は、営業、財務、秘書、技術などから選ばれます。7人のうちのほとんどが、仕事はできるのですが、人格や私生活に難があったり、社内に敵がいたりと、一癖も二癖もありそうなメンバーである点が面白いと思います。社内では決して主流派ではなく、傍流というか、嫌われ者的な存在なのですが、いざとなるとこうした人材が頑張るというのも、現実の会社組織ではありそうですよね。

 シリアスな点では、「技術は誰のものか」をドラマの中では問いかけていると思います。異端児7人が奔走するプロセスで、その前に立ちはだかるのが元タクミ電機のエンジニアです。リストラされて中国企業に拾われて、そこでタクミ電機を出し抜くような製品開発に取り組んでいます。これも、日本企業を退職した多くのエンジニアが韓国や中国に渡っていますから、現実にもあり得る問題だと思います。グローバル化が加速し、人が国境を超えるのはいとも簡単になりましたから。日本では法律を整備して知的財産の保護を声高に叫ぶ動きが強くなっていますが、エンジニアの頭や心の中に残っているものを消し去ることはできません。