─組織改編の理由は分かったが、アルプス電気は2009年に一度、組織を改編している。

 確かに、2009年4月にそれまで60年近く続いた組織体制を見直している。製品の種類ごとに組織を分けていた「ディビジョン制」を廃止して、「AUTO(オートモーティブ)事業本部」「HM&I(ホーム、モバイル&インダストリー)事業本部」「MMP(メカトロニクス、マテリアル、プロセス)事業本部」の三つに再編した。

 ディビジョン制では縦の連携のみが強くなってしまっていた。製品ごとに事業部があり、事業部ごとの競争が起こってしまい横の交流が希薄になっていた。その対応として、2009年4月に各事業本部に開発と営業を配置し、一体となって製品を売り込む体制を整えた。

 今回の改編では、さらに踏み込んで技術本部、営業本部、生産本部と、機能別に横で分けた。理由は、マーケットが変わったことだ。今さら、民生機器でモジュールに力を入れても売れるわけがない。すると、モジュール化に強い技術者は車載部品事業に移ったほうがよい。事業部や組織の壁があると、柔軟な配置転換ができない。

 さらに、2011年8月に東京本社に仮想的な「ビジネスセンター」を設けることにした。これまで技術は古川工場で営業は東京本社だったが、事業の中心を東京本社のビジネスセンターと決めた。古川工場の技術部隊と東京本社の営業部隊で向いている方向が違うと、スピード感を持つことはできない。技術部隊と営業部隊が同じ場所にいる専業メーカーと戦わなければならない。

 ビジネスセンターは、東京本社の4階の大部屋に設けている。数十人いる技術開発の担当部長の全員が一つのフロアで仕事ができる空間である。すべての技術部長には火曜日と水曜日に週2回、ビジネスセンターに集まるように命じた。ビジネスは技術と営業の両者が関係して動かしていくもの。一緒に考えて決めてくれよと伝えている。

 この1年間で、かなり技術と営業の距離は縮んで意思疎通ができるようになった。本音をぶつけ合って議論できる。これまでは組織が違えば遠慮する部分もあった。本音でやらないと勝ち抜いていけない。特に、スマートフォンは動きが早い。覇者が次々に交代し、製品も次々に出る。スピード感がないと簡単に淘汰される。まだ結果を語るには早いが、いい方向に進んでいる感触を持っている。