─有機ELでは、現状、韓国Samsung Mobile Display(SMD)社が市場を独占している。新会社では、どう取り組んでいくのか。また、SMD社に対して巻き返しは可能なのか。

 SMD社は量産で先行したというアドバンテージはあるが、まだまだ我々に勝機がある。韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「Galaxy」シリーズに搭載されているSMD社の有機ELであれば、遜色ない技術を我々は持っている。ソニーはモニター向けに有機ELを量産中である他、東芝や日立も研究開発を進めてきた。技術の完成度は高まっている。

 ただし、有機ELは今の技術のままでは真価を発揮できない。現在の金属マスクを用いた有機EL素子の蒸着プロセスでは、スマートフォンに求められるような高精細化は難しい。消費電力が高く、寿命の問題も払拭できていない。さらには、太陽光下では視認性が低下してしまう。

 有機EL市場が、本当に立ち上がるには、大胆にプロセス技術を変えていく必要がある。このためには、材料メーカーや装置メーカーと共同で開発を進めていく必要があるだろう。

 一方で、我々の顧客が、有機ELを一般ユーザーへの訴求力がある一種のブランドとみなす他、大幅な薄型化を図れるというメリットを重視しているのは事実だ。

 我々は、有機ELをもう一度、実用化に向けた議論のテーブルに乗せる。その上で、近い将来に打って出るのか、もう少し時間をかけるのかを決める。もちろん、有機ELなどの新規技術を導入していかなければ、メーカーとしての成長は止まってしまう。いずれにせよ、どこかで有機ELの量産化に踏み出さねばならない。

 その際、市場の動きを注視して、どこに力点を置いてやるべきかを考える必要がある。用途によっては、IPS液晶を極めるほうが、市場で受け入れられる可能性はある。IPS液晶で勝ち残れる分野と、有機ELで市場を切り開く分野を見極めていく。