日経BP社および日経エレクトロニクスが、日本の大学の理工系研究室およびベンチャー企業の研究開発を応援するべく立ち上げた「NEジャパン・ワイヤレス・テクノロジー・アワード」。編集部が、過去1年間の日経エレクトロニクスおよびTech-On!に掲載された技術記事の中から、10件の候補を選出しました。
 2013年5月には、審査委員会がこの中から1件を選び、最優秀賞を贈呈します。次回以降の連載記事で、各候補技術を詳しく紹介していきます。

東北大学:補助人工心臓用のワイヤレス・ポンプ

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 東北大学は、補助人工心臓に向けたワイヤレス式の小型ポンプを開発した。体内に埋め込み、外部から磁界を印加して駆動するタイプで、人間の心臓と同程度のポンプ能力を備える。

 開発したのは、電気通信研究所 教授の石山和志氏らの研究チーム。補助人工心臓は心臓の一部機能を補助するもので、心臓疾患の患者が治癒したり、心臓移植したりするまでの期間に使用する。開発品はワイヤレスのため、現行の補助人工心臓に必要な、皮膚を貫通するチューブなどが要らない。大きさは単2形乾電池と同程度である。120mmHg以上の圧力において、1分当たり5L以上の流量を実現した。(2012年4月、Tech-On!掲載)

埼玉大学:EVに向けた双方向ワイヤレス給電技術

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 埼玉大学は、電気自動車(EV)に向けた双方向のワイヤレス給電システムを試作した。充電器からEVに給電するのに加え、EV側から給電することも可能にした。EVと家庭で電力を融通する用途などを想定する。

 開発したのは、工学部 教授の阿部茂氏らの研究チーム。角形コイルを用いた給電装置で、送電側(1次側)コイルのコンデンサを直列に接続し、受電側(2次側)コイルのコンデンサは並列に接続する「一次直列二次並列コンデンサ方式」(SP方式)である。このSP方式で、コイルの巻数比を結合係数の逆数に選ぶと、1次側と2次側の電圧を等しくでき、さらに回路構成を工夫して双方向の給電を実現した。(2012年12月、Tech-On!掲載)