あの有名家電量販店がTOP500入り!? 驚かされたHWベンダーのTOP500でのアピール

 著者がTOP500を知った2000年頃は、スパコンベンダーが数多くあり、それぞれのハードウェアメーカーがTOP500におけるシェアを必死にアピールしていました。TOP500の500システム中の自社ベンダーのシステム数や100位以内のシステム数、さらにTOP500にランクインしているシステムのバリエーション数、総ノード数、総FLOPS数など、各社がTOP500でNo.1を宣言するためにさまざまなアピールを行っていたのです(笑)。

 特にシステム数は、当時米IBM社、米Hewlett-Packard社、米Sun Microsystems社、米COMPAQ Computer(旧DEC)社 米SGI-CRAY(現在はそれぞれ別法人)などの各社がしのぎを削っていましたが、実は一度計測したシステムと同じ構成の別のマシンも登録されるので、同じメーカー、同じ性能値がずらっと並んでいることもしばしばでした。

 一番びっくりしたのは、某スパコンメーカーが納めた日本の某家電量販店のサーバー。そんなものまでTOP500に並んでいて「えーー」とびっくりしたことがあります。到底HPC用途とは思えませんが、同じ構成ですからランクインしてしまうわけで(笑)。そんな、変な競争が勃発していた年さえあったTOP500でした。

印象に残ったPentium Proのスパコン!? 「ASCI Red」とPGIコンパイラとの出会い

 この頃、筆者は自身がHPCの世界に没入していく、大きなきっかけを作ったスパコンに遭遇していました。著者が知った時はすでに世界最速ではなく「2位」になっていましたが、そのスパコンの名は「ACSI Red」です。米国のサンディア国立研究所とインテルにより共同開発されたこのスパコンは、数千!!という複数のサーバー(実際には4500台超)をネットワークで結合した、現在のクラスタ型スパコンの走り的なスパコンでした。

 筆者にとって、このACSI Redの何が衝撃的だったかというと、スパコンといえば専用設計のCPUかと思っていたのに、なんと「Pentium Pro」で作られているというのです!! 「え!! PCワークステーションのCPUじゃないか!? そんなんでスパコンが作れるのか…」と、にわかには信じられませんでした。

 このASCI Redでは、ハードウェアの設計もさることながら、コンパイラも、このシステムの性能を最大限に発揮する(Intelのx86プロセッサーの力を最大限発揮するといった方が良いですね)ために新たに登場したものでした。そのノウハウを基に開発されたPGI(The Portland Group Inc)コンパイラ製品のサポートを行うことで、著者は改めてASCI Redを知ったという感じでした。そして、前述の通り、これが著者にとって大きな転機となったのです。

 次回は、PGIコンパイラから筆者が入っていった「PCクラスタシステムと活用したHPC」の世界について、さらに突き詰めていきたいと思います。