「三輪車」という言葉から何を連想するだろうか。すぐ思い浮かぶのは小さい子供用の三輪車、年配の人なら昔懐かしい「オート三輪」かもしれない。ピザ好きの人なら宅配用の「三輪スクーター」が頭をよぎったはずだ。

 いずれにせよ、三輪車両は現状ではモビリティ(移動手段)として非常にニッチな存在だ。ところが、小型・低速の電気自動車(EV)として将来的にメジャーな存在になる可能性が出てきた。

 その理由は、1)コンパクトで小回りが利く、2)車両価格や維持費が安い、3)環境性能が高い、といった特徴が、「脱ガソリン時代」の地域の足にうってつけと評価されているからである。すでに中国山東省の農村地域などでは、三輪車両の低速EVが庶民の足としてごく普通に利用されている。

 国土交通省は2012年6月、軽自動車よりも小さい1~2人乗り程度の自動車「超小型モビリティ」の普及を目指して、「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」を公表した。2012年11月には、超小型モビリティの安全性確保を目的として、道路運送車両の保安基準の緩和を活用した認定制度の新設を検討していることを発表した。同省は2012年12月21日まで、認定制度の策定についてのパブリックコメントを募集した。

 超小型モビリティの新しい車両区分の制定にはまだ時間がかかると見られるが、国内では普及へ向けて本格的に動き始めている。

1950年代には隆盛

 オート三輪に代表される三輪車両は、国内では第2次世界大戦後から1950年代にかけて隆盛を極めた。ところが、道路インフラが整備されて高速走行が当たり前になると、三輪車両がカーブなどで転倒する事故が多発した。

 さらに構造上、四輪車両と比べると居住性が劣るという問題も顕在化した。コスト面で四輪車両に対する三輪車両の優位性が薄れた結果、衰退が始まり、やがて量産車両からほとんど姿を消してしまった。