壹週刊の報道を受けフォックスコンは2013年1月9日に声明を発表、「報道の大半は事実と異なる」としながらも、一部の社員の収賄について既に関係当局が調査中だと表明した。また、同社トップの郭台銘・董事長が、事件の徹底調査と、購買手順の見直しなど再発防止に向けた作業を行うよう社内に指示したことを明らかにしている。

 さらに台湾メディアの中には、今回の収賄疑惑において、フォックスコンが進める生産ラインの自動化に関わる設備が多く含まれていると指摘する向きもある。『中国時報』(2013年1月10日付)もその1つで、プリント基板(PCB)検査装置のある台湾系企業が、事件の発覚後にフォックスコンと話し合いを持ち、取引を中止されたと報じている。これに対してこの企業は、「重要な顧客を失った事実はなく、特定の顧客に対するコメントもしない」と話しているという。

 本コラムの「トランスフォーマー VS 農民工」や、当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)に掲載した「鴻海、2014年にもロボットと人手が逆転の見方 太原工場の暴動契機」で、生産拠点を置く中国の人件費高騰や、万単位のワーカー管理の難しさから、フォックスコンが生産ラインの自動化を2010年から加速し始めたことに触れた。例えば、香港紙『文匯報』(2012年10月5日付)が伝えた福建省アモイ(厦門)の産業用ロボットメーカー、アモイ盈特自動化技術によると、フォックスコンはゴムのディスペンス・ロボットなどの自動化設備を2011年だけで2000万元分、2012年も1000万元分、同社から調達したことを明らかにしている。

 『中国時報』(2013年1月10日付)の伝えた自動化設備の台湾系業者は、「SMTがリベートを取るといううわさは数年前から聞いていた」とコメント。「郭会長は清廉潔白で、不正の大嫌いな人。かつては郭会長の気風が会社の隅々にまで行き渡っていたが、規模が膨れ上がったこの数年、フォックスコンの風紀が緩み始めているのを感じていた」と話す。

 シャープの提携交渉をきっかけに、日本人から見れば強引すぎるとも言える郭会長の強力なリーダーシップや、トップダウン型の経営手法の下、フォックスコンが成長を遂げてきたことは、日本でも知られるようになった。ただ、従業員数が120万人とも130万人とも言われるまでに膨れ上がった今、郭会長の振るタクトに従って社員がいっせいに同じ方向を向き走り出すには、フォックスコンは巨大になりすぎてしまったのではないか。そんなことを思わせる今回の不祥事騒動だった。