半導体分野では「ビッグデータ解析」が次の成長市場として期待されています。ビッグデータを解析するためにはマイクロプロセサに加えて、高速かつ大容量の新型メモリが必要になるからです。先日、中央大学 教授の竹内健氏が弊社主催のセミナーでこのことについて触れていました。

 例えば、中央自動車道の笹子トンネル崩落事故では多くの犠牲者が出ましたが、長年の保守・点検データをデータベース化し、ビッグデータ解析をすることで、こうした事故を未然に防げる可能性があります。おそらく老朽化したトンネルや建造物は世界中に山ほどあるでしょうから、市場としてはかなり大きいと考えられます。企画や設計、製造だけではなく、このような「保守サービス」で付加価値を提供することが今後は重要になるとの指摘でした。そのために必要なビッグデータ解析では、半導体技術がふんだんに必要となります。

 例えば、膨大なデータの中から必要な情報を検索する場合、インデックス・データ(索引)をいかに作るかが重要になります。インデックス・データの総量は、元データと同じくらい巨大になるそうです。しかもインデックスは常に更新する必要があるため、ランダムな書き換えが苦手なNANDフラッシュ・メモリは適していません。そこで、最近ではDRAMを用いたインメモリ・データベースを利用しますが、DRAMは容量単価が高い上に、消費電力も大きいため、これに代わる高速・大容量の新型メモリが強く求められているとのことでした。

 新型メモリの候補としては、磁気メモリ(MRAM)や抵抗変化型メモリ(ReRAM)、相変化メモリ(PRAM)など、多くの候補が挙がっています。メモリそのものの技術開発も重要ですが、ビッグデータ解析ではメモリをいかに使いこなすかといったコントローラやミドルウエアの技術が非常に重要なのだそうです。また、メモリを供給できる半導体メーカーは寡占化が進んで限定されているのに対し、コントローラやミドルウエアの開発では、ベンチャー企業が活躍できる余地が大いにあります。

 2012年8月に米国サンタクララで開催された「Flash Memory Summit」では、このようなメモリを使いこなすための各種技術が続出しました。ただ、250件以上の発表の中で日本からの発表はわずか数件しかなく、この分野で日本はもっと頑張るべきだと竹内氏は主張していました。最近は日本の半導体業界に今ひとつ元気が感じられないのですが、竹内氏が指摘するように成長市場はまだまだありそうです。こうしたチャンスをうまくつかみ取ってほしいものです。