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中国飲食サービス新時代の幕開け(2)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2013/01/15 00:00
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今回紹介する書籍
題名:海底捞你学得会
著者:楊鉄鋒
出版社:人民郵電出版社
出版時期:2011年8月

 今週は『海底捞你学得会』(海底撈から学べる)の2回目。中国の人気鍋料理チェーン店「海底撈」の成功の秘密を価格、利益という点から見ていきたい。

 まず、本書の分析に先立ち海底撈のイメージを紹介しておく。値段はちょっと高め。内装はおしゃれ。サービスは最高。要するにちょっと気取った日やデートなどに使いたいイメージである。つまり、薄利多売は難しい営業形態の中、彼らはどうやって利益を上げているのか。その秘密は、まず徹底した利益率の重視にある。海底撈経営本部がそれぞれの支店を評価する際に最も重要視するのは利益率、顧客満足度、従業員満足度だという。売上高が高くても上記3点が高くなければその店の評価は上がらない。では、いかにして利益率を上げるのか。

 海底撈は、メニューだけ見るとほかの火鍋屋と大して変わらない。しかし、本書著者がそのメニューを分析したところ「利益」と「顧客心理」のぎりぎりのポイントで大変な工夫がなされていることが分かったという。たとえば2011年の春のメニューは飲料類を除いて135種類。そのうち4品が「おすすめ新メニュー」となっており、この時期は「川魚のつみれ」「蟹のつみれ」「XOボール(蟹、貝、イカなどのつみれ)」「ハーブチキン」が「おすすめ」となっている。それぞれ湖北料理と広東料理から来たもので、目新しく客にはなじみがないため利益率も高くできる。

 また、海底撈の価格設定で最も「賢い」のはたれ、薬味を一律一人9元としたことだ。たれや薬味はいわば鍋料理の味の決め手である。鍋料理屋の中にはたれや薬味をそれぞれ注文して買わせるところがあるが、そのやり方だと、客は注文したものを残すのが嫌なので最後の方は足りなくなったたれや薬味で何とか鍋を食べきってしまうことになる。そうすると食事の最後の方は味もよくなく、当然客の満足度も低くなり、リピート客にならなくなるのだ。

 このように海底撈の価格設定は顧客心理を徹底的に研究した結果なされている。商品は一律に高いのではなく、「顧客がいかにその商品を必要としているか」を基にして価格を決めている。たとえば鍋料理の基本要素はスープ、肉類、野菜、たれ・薬味、飲料、主食の6要素と言えるだろう。その中でもなくてはならないのがスープ、肉、野菜で、これらがなくては「鍋」にならない。海底撈ではその「必須」の3種類の利益率を上げるようにしてある。また、スープ単独で頼む形にしてあるため、安いスープを頼んだ客もそれに合う肉や魚は高いものをとるような味の設定になっている。また、XOボールというメニューは上記のとおり蟹やイカなどのつみれだが材料やコストがわかりにくいため客に利益構造が見えにくくなっており、割高感を感じさせない。

 このようにして海底撈は安く見えて利益率の高いもの(XOボールなど)や、客の満足度を上げるもの(たれや薬味:一定の料金で取り放題)などを絶妙に配置して高利益を生み出している。

 ちなみに欧米の先進諸国では飲食の利益率の平均は70%だという。しかし、中国ではまだ70%の利益を上げられる店はほんの一部だ。欧米並みの利益率を上げられる店が増えることが中国の飲食業の真の意味での進化を意味するものならば、海底撈は明らかに中国の中で一歩先を行く飲食店だということができよう。

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