新年である。2008年のリーマンショック以来、右往左往、蛇行の連続である。2013年も大変な年になるだろう。

 さて、2012年2月から始めた21世紀考も一巡、12回目である。せっかくの区切りなので、本業である大学教育の話をしよう。もちろん、過去のコラムでも触れているが、昨年末は新設大学の認可を巡って大学の存在が問われたという状況変化も織り込んで話をしよう。もちろん、Tech-On!のコラムなので次世代の技術者養成を踏まえた話である。

 大学は迷走している。第二次世界大戦以前、大学生はエリートだった。エリートだった親は子供をエリートにしたがり、エリートではなかった親も子供をエリートにしたがった。時はベビーブーム。今でいう団塊の世代。若年人口は増えるし進学率は上がる。その受け皿に、大学が増設された。親も喜ぶ、子も喜ぶ、地域も喜ぶ、政治家も喜ぶ。誰も自然な疑問「皆がエリートになった時、誰がエリートの面倒をみるのか?」は口に出さなかった。

 もっとも、増設のペースはベビーブーマーの成長には追い付かなかった。1960年代から1970年代にかけて大学受験、就職は熾烈を極めた。このストレスと増加したベビーブーマー世代の人的パワーが学園紛争を引き起こした。ベビーブームは世界大戦の後遺症なので、同様の現象が世界中で起こり、相呼応して昔の権威を引きずり降ろした。日本では、明治維新、敗戦と近年の大きな文化断絶を経験したが、学園紛争が三度目の断絶を生んだ。