日本の原子力政策が不透明さを増し、電力の需給ひっ迫と電気料金の値上げ圧力が高まる中で、工場やビルといった事業所で、電力需要のピークをシフトさせる試みが活発化している。

 夏のピーク時に、大型の蓄電池から放電したり、エネルギー管理システム(EMS)を導入して自動制御によって空調機器の温度を上げたり、さらに照明機器の照度を下げたりすることによって省エネとコストダウンを達成する。さらには地域のEMSと連携して、地域からの指令に基づいてピークシフトを臨機応変に行う。これによって、地域レベルでの電力需給調整に貢献する試みがスタートしている。

スマートメーターを900カ所に設置

図1●日立製作所大みか事業所における実証設備の概要
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 「ものづくりのスマート化」を目指して、電力ピークシフトの実証実験をスタートさせたのが、電力や鉄道分野の制御システムを開発・製造する、日立製作所インフラシステム社の情報制御システム事業部である。同事業所内の各施設にEMSを分散配置(図1)。4.2メガワット時(MWh)の蓄電池、総発電量940kWの太陽光発電設備、さらに900カ所にスマートメーターを設置して、2012年7月から本格運用を開始した(図2、図3)。

図2●2012年7月より本格運用を開始した大型蓄電池。新神戸電機製の鉛蓄電池を使用している
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図3●2012年5月7日から発電を開始した、最大出力440kWの太陽光発電設備
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 災害時などにおける非常用のバックアップ電源として使うBCP(Business Continuity Plan)の検討と共に、夜間に充電して昼間に放電することによってピーク電力をシフトする実験が進められている。

 ピークシフト実証の手順は以下のようだ。(1)各棟に分散するEMSが各々の使用電力を予測、(2)太陽光発電システムを持つ棟の工場向けエネルギー管理システム(FEMS)が太陽光発電電力を予測、(3)使用電力から太陽光発電による電力と蓄電池で放電可能な分を差し引いた目標電力を設定、(4)実際のピーク時に太陽光発電分に加えて蓄電池からの放電によってピークシフトを実施、となる。