2つのフェーズに共通して実現すべきこと

 区分[1][6]の現場層に共通の要件として代表的なものを3点挙げておく。

◇プロジェクト管理:進捗、課題について最低限の項目を大日程、中日程レベルで管理するのがよい。特に源流プロセスにおいては、厳格なルールでプロジェクト管理を運用しようとすると破綻しやすい。成功の秘訣は、ユーザーの現場とマネジメントの双方にとって有益となる最低限の要件に限って管理することである。

例えば、コスト管理のために、EVM(Earned Value Management)などのコンセプトで個人のタスクまで管理することを、[6]でやることは可能ではあるが、源流の[1]ではやるべきではないと考える。つまり、同じPLMの範疇であっても、フェーズの違いにより、その要件を変える必要性があることを肝に銘じる必要がある。

◇ビューワの活用:CADよりも安価で誰でも使えるビューワの活用を、戦略に基づいて進めることが重要である。例えば、営業の引き合い業務において、ビューワで製品を仮想的に可視化することで受注仕様と製品の関係が分かりやすくなるであろうし、保守サービスにおける対象箇所の分解・組立・検査などの業務を動的に可視化することも有用であろう。

◇川上機能の海外拠点移管(ローカル・エンジニアへの移管)の仕組みとしてのP3LM構築:既に家電業界や自動車業界の新興国市場対応として、この川上機能の海外拠点移管が始まりつつある。そのためには、P3LM(業務プラットフォーム)のような仕掛けが必須であろう。日本の「源流プロセス」でベース機種を確立し、商品化/製番化のP3LM(業務プラットフォーム)は海外拠点に移管して、ローカルエンジニアの業務のムラ、ムダを排しつつ育成を図ることができる。場合によっては「源流のP3LM(業務プラットフォーム)」もローカルで構築していくべき時期がくるかもしれない。日本と同じCADを導入することは本質的な必要条件ではなく、同じ業務プロセス、同じ手順(考え方の順番でも可)で仕事ができる業務プラットフォームがあれば、ムラ、ムダは排除され、なおかつ進化が可能となる。

 以上、「これからのPLM」の実現方法を2回にわたって述べてきた。多分に理想形を描いて説明した。読者の業種・業態によっても合っているところ、参考にならないところがそれぞれあると思うが、少しでもヒントにしていただければ幸いである。また、忌憚のないご意見をいただけると、なお幸いである。

 次号では「これからのPLM」コンセプトを実現するための「システムの選択の仕方」について触れ、全体のまとめへと入っていきたい。