[3]プラットフォーム開発プロセスの構築

 ここで言う「プラットフォーム」とは、複数の製品の共通部となる製品プラットフォームや、複数の製品に適用する技術プラットフォームを指す。このプラットフォーム開発に関して、企業を大きく2つに分けることができる。すなわち、プラットフォーム開発のプロセスを持っている企業とそうでない企業である。

 前者の例としては、自動車メーカーや携帯電話メーカーなどが挙げられるだろう。昨今はモジュラーデザインが流行しているが、企業の中にはこれを改善活動として業務の片手間に行っているため、なかなか活動が進んでいないという例も多い。モジュラーデザイン手法においてもいわれていることだが、まずはプラットフォーム開発を行うプロセスの構築が必要なのである。

 そこで、プラットフォーム開発のプロセス構築上のポイントだが、モジュラーデザインの手順についてはさまざまなところで述べられているので割愛する。ここでは主に、技術安定性の早期確保について考えていこう。プラットフォーム開発におけるリスクの1つとして、品質問題が発生した場合に被害が広範囲に及ぶことが挙げられる。このリスクを低減するため、プラットフォームがさまざまな製品や使用条件で用いられても、問題の起こりにくい、安定性のある技術を採用しなければならない。

 これは、多くの企業で見られる「まず標準条件における性能を確保し、その後で量産バラツキや使用条件のバラツキ、劣化によるバラツキに対応していく」という、開発の進め方を変えなければならないことを意味している。すなわち、製品開発に先行するプラットフォーム開発においては、まず安定性のある技術を開発しなければならず、さまざまなばらつき対策を行った後、各製品開発において必要な性能を確保していくという、これまでとは逆の進め方が必要になるのである。

 このポイントを認識せず、従来の考え方のまま単に製品の一部分を改設計するようなプロセスを構築してしまうと、前述したような品質問題が発生するリスクが高まる。そして、これを防止するには、各製品開発に多大な労力が必要となるのである。

 このような問題の発生を防止するために有効な考え方が“品質工学”である。さまざまな事情により、現状では広く開発現場に普及しているとはいいがたい手法だが、プラットフォーム型開発においては、その利用を改めて検討する価値があるだろう。