[2]後工程オペレーションに対する影響の検討

 “後工程オペレーションへの影響”とは、設計部門での作業の後に各部門で行うオペレーションにおける問題発生や工数増加などを指している。すなわち、生産技術部門による工程設計や作業手順書作成、また購買部門による調達部品の確認、あるいは製造部門による製造部品の確認、販売部門による見積もり、そしてサービス部門による保守部品の確認などのオペレーションへの影響である。前回述べた通り、これらのオペレーションには、開発プロセス(プロセス遂行にかかわる情報システムを含む)の変更によって影響が生じるにもかかわらず、開発プロセス改善の目的に後工程オペレーションの問題点撲滅や工数低減が含められることは少ない。せいぜい、後工程オペレーションに大きな問題が発生しないことを確認する、といった程度の検討で済まされることがほとんどだろう。

 しかし、特に顧客向けカスタマイズ製品があるなどの理由で製品数が多い場合や、部品点数が多い製品では、保守対応期間が長いものを中心に、後工程オペレーションへの影響が大きくなることが多い。そのため、後工程のオペレーション視点で開発プロセスを整備しておく必要がある。また、後工程オペレーションについては、特に開発プロセスによって規定される情報システムの影響が大きいので、情報システムが絡む開発プロセス整備の際は、後工程オペレーションの整備が必須となる。

 具体例として、後工程のオペレーションに大きな影響があるE-BOM(Engineering Bill of Materials、設計部品表)のケースを挙げ、そこで検討すべき点を考えてみよう。

 検討すべき1点目は、生産技術、生産管理、製造、購買、販売、サービス部門といった後工程部門の業務分析である。開発プロセスおよびE-BOMの仕様により、「部品の手配ミス」や「在庫の増加」「製造できない」「保守部品を探索できない」「トレーサビリティがない」などの問題が発生しないか? 業務工数がどのような影響を受けるか? といったことを分析する必要がある。

 2点目は、各部門や各拠点のガバナンスについての検討だ。複数の海外拠点で生産している製品の場合、そのガバナンス形態の違いにより、適切なプロセスやBOM連携の形態は異なってくる。例えば、日本拠点が全ての拠点へ必要な情報を全て配信するようなガバナンス形態を採るのか、あるいは日本拠点は共通情報の整備まで行い、その共通情報を基に各拠点の責任で必要な調整を行うような形態を採るのか。ガバナンス形態の違いにより、代替部品や作業手順変更などについて、どの部門どの拠点がどこまで管理するかを整理する必要があるのだ。新しい開発拠点立ち上げの際、これらの検討が不十分なままプロセスやBOMを構築してしまうと、後工程オペレーション上で問題が発生したり、業務工数が増加したりするのである。

 3点目は、部品共通化を行う範囲である。一般的に、BOMを分けてしまうと部品共通化を推進しにくくなる。また、部品構成に基づいた技術検討も同様だ。従って、部品共通化検討プロセスやBOMの構築に当たっては、部品共通化の検討範囲を確定する必要がある。なお、これは設計部品の場合であり、購入部品については部品マスタの共有によって共通化が可能である。

 以上、影響の大きいBOMを具体例に挙げてみた。いずれにせよ、開発プロセス改革を計画しようというときに、後工程オペレーションへの影響の検討はあまり行われないか、開始が非常に遅くなる場合が多いので、注意が必要である。