前回は自動車産業の国際競争力の変化を、「貿易特化係数」という指標を用いて定量的に分析してみた。そこで今回は電気・電子産業について同様の分析を行い、自動車産業との違いやサプライチェーン軸での関係性について考察してみたい。

電気・電子産業の貿易特化係数の変化

 まず前回のおさらいになるが、「貿易特化係数」について再確認しよう。「貿易特化係数」は、税関を通る輸出額、輸入額を用いて算出可能な経済指標である。輸出額、輸入額は、財務省から品目別の値が公表されているものを用いた。「貿易特化係数」は、(輸出額-輸入額)/(輸出額+輸入額)で算出され、着目した品目の輸出額が輸入額を上回っているとプラスの値をとる。逆に輸入額が輸出額を上回る状況ではマイナスとなる。これは国の輸出競争力を表す指標の一つと考えられ、「国際競争力係数」と呼ばれることもある。

※参考文献:「貿易特化係数」金融情報サイト「iFinance」

 それでは、電気・電子産業に関する、1988年から2011年までの「貿易特化係数」の推移について確認してみよう。図1を参照願いたい。

図1●電気・電子・素材業の貿易特化係数の推移
財務省「貿易統計」を基に筆者作成
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 この20年間で劇的に変化したのは、電算機類(含周辺機器)と音響映像機器(含部品)だ。いわゆるコンピューター関連製品と、TVやオーディオなどに代表されるAV製品である。1988年から2011年の値を比較してみると、電算機類(含周辺機器)は0.7から-0.6に下落し、音響映像機器(含部品)も0.8から-0.2に下落したことが分かる。両方とも1988年時点では非常に高水準で、加工貿易の典型製品であったが、現在は輸入依存に変化した。

 本連載の第1回でも示したが、リーマンショック後、これらの業種の収益性は芳しくない。電気機械器具製造業は2006年第3四半期時点の営業利益と比べると1/4の水準となり、また、情報通信機械器具製造業は1割以下の水準まで下落している。これらのデータから、「貿易特化係数」の下落が、企業業績低迷の原因の一つになっていると考えてよいだろう。

 次に、電子部品業についても考察してみたい。図1から、半導体等電子部品の「貿易特化係数」は、0.7から0.3まで低下したことが分かる。しかし、完成品の低下幅と比べると、電子部品の低下幅はまだ小さい。電子部品業界では「海外ブランドの電子機器が増加したが、中に入っている電子部品は日本製が多い」といわれているようだ。しかし、これは事実なのだろうか?

 米Apple社が2011年に公表したサプライヤーリストには、多くの日本企業が名を連ねている。たとえば、旭化成、エルピーダメモリ、フジクラ、イビデン、日本航空電子工業、メイコー、ミツミ電機、村田製作所、NEC、パナソニック、ルネサス、ローム、セイコーエプソン、シャープ、ソニー、住友電気工業、TDK、東芝などである。公表された全サプライヤー中、20%強が日本メーカーとなっている。これを多いと見るか少ないと見るかは難しいところだが、日本製造業の電子部品がプレゼンスを保っていることは確かだといえる。