以上、この20年間に「開発プロセスがレベルアップした」こと、「あまり変えられていないこと」を5つの視点で見てきた。レベルアップできたことであっても、その多くはまだいくつもの課題を残している。しかし、これらが変えることに成功してきたのは間違いない。したがって、これからもレベルアップを続けていけばよい。

 問題は、これまで「思うように変えられなかったこと」への対応である。特に組織間の調整が必要な課題の中には、20年も前から問題点が見えていたにも関わらず、「解決への歩み」が非常に遅れているものもある。これらは当然、何らかの手を打たなければならない。そのとき良いきっかけとなるのが環境の変化だ。特に、本連載の1つのテーマであるグローバル化、特に開発機能の海外展開においては、以下のような点を考慮しなければならず、それ自体、開発プロセス改革の大きなチャンスとなる。

  • ・海外開発拠点の役割定義が必要であり、開発部門全体の役割を見直すきっかけとなる
  • ・海外開発拠点と他部門の連携を検討する必要があり、開発プロセスの後工程プロセスへの影響を検討するきっかけとなる
  • ・本国と海外開発拠点や自社と海外パートナー(ODM、サプライヤ、OEMなど)とのやり取りにおいては、相手がこちらのことを理解していないことを前提にしなければならず(阿吽の呼吸を前提にできず)、情報連携の方法を見直すきっかけとなる

 もちろん、新たな開発拠点を海外に立ち上げるということで、最低限、開発業務を開始できる環境にするだけで精一杯というケースも多いだろう。しかし、最低限の認識が開発業務の視野でばかり語られていたのでは、開発プロセス改革のチャンスを逃すだけでなく、後工程部門のオペレーションにおける問題発生や工数増加につながる可能性がある。われわれの立場から言うと手前味噌に聞こえるかもしれないが、コンサルタントやベンダーなどの外部を利用してでも、このチャンスに十分な検討を行うことを強く推奨したい。

 次回は、今回振り返った内容と今後の動向を踏まえ、開発プロセス改革の進め方について述べる。