[1]開発プロセスにおける部門連携について

○:開発初期段階における後工程部門のレビュー参画
△:開発初期段階における後工程部門による課題解決

 まずは、開発プロセスにおける部門連携について取り上げる。なお、ここでの後工程部門とは、生産技術、品質保証、購買、製造、営業、サービスといった部門を指す。

 かつては設計部門が中心となって開発プロジェクトが進められ、後工程部門の関与が始まるのは、試作前後からになることが多かった。しかし現在では、開発スタートから試作前の段階で、後工程部門が全く関わらない企業の方が珍しくなっている。コンカレント・エンジニアリングやサイマルテニアス・エンジニアリングといったキーワードで進められた開発プロセス改革により、いまや開発初期段階から多くの関係部門が開発プロジェクトに関わることが、ごく一般的となったのである。このことは大きな進歩といってよいだろう。

 その一方で、開発初期段階における後工程部門の開発プロジェクトへの関わり方、具体的にはレビュー方法やレビュー指摘への対応方法は、まだ改善の余地が大きい。本連載の共著者である鳥谷氏が第2回の記事で述べたような、3次元データを用いて後工程部門のメンバーにとっても直感的に分かりやすくしたレビューを、定常的に実施している企業がどれほどあるだろうか? 多くの企業がまだ試行錯誤を続け、どのようにしていくべきか模索している状況なのではないだろうか。3次元データを活用し、部門間を横断したレビューができているとは、まだまだいい難いのが現実である。

 また、課題抽出の方法以上に改善の余地があるのが、課題解決の方法である。多くの企業でレビューの構図が、後工程部門から設計部門へ要望を伝える形となっており、課題解決が部門連携で進められていない場合が多いのだ。後工程部門のメンバーにも分かりやすいレビューへ、なかなか改善が進まないのにはもちろん理由がある。ある会社の開発担当者によれば、「これ以上他部門から指摘が出ると開発部門では対応できない」とか「時間がかかってしまい開発日程を守れなくなる」などといった、リソース面・スケジュール面の両方に問題があるのだという。

 このように、形式的には当たり前になった後工程部門の開発初期段階への参画だが、そこにはまだ問題が残っている。課題の抽出方法や解決方法――特に後者の「部門連携を効果的に行う方法」については、課題の責任を各部門が押し付け合うのではなく、「最も効果的な施策を実行できる部門が責務を担う」という、課題管理の基本を遂行しやすいプロセス整備が必要である。