[4]開発プロセスの改革レベルについて

○:個別商品企画の高度化、性能の早期確保
△:製品群企画の高度化、技術安定性の早期確保

 次に、開発プロセスの改革レベルについて検討する。日本企業は「擦り合わせ」が得意であるといわれるが、実は開発プロセスにもその点が現れている。たとえば個別商品の商品企画において顧客ニーズを把握するプロセスや、個別製品の性能向上のための構想設計段階における技術方式選定プロセスなどについて、高レベルのノウハウを持つ企業は数多く存在する。しかし、その一方で、「製品群の企画」や「技術安定性の早期確保」については、あまり進んでいるとはいえない企業も多いのである。

 製品群企画とは、製品群単位でモジュラーデザインを行うことを指し、その後、作業は製品プラットフォーム設計、個別の製品設計へと進んでいく。自動車など一部の製品や企業では、この製品群企画への取り組みも始まっているが、個別製品の開発プロセスの改善を繰り返している企業では、手が付いていないところも少なくない。もちろんモジュラーデザインは最近流行の手法であり、取り組みを進めている企業は多い。だが取り組んでいるにもかかわらず、部品流用率は上がったものの製品の仕様や部品構成が変わらない、という企業は、まだ十分踏み込んだ取り組みができてない、と考えた方がよい。

 技術安定性の早期確保とは、量産ばらつきや使用条件のばらつきなどに強い技術の開発が先で、その後この技術を利用して個別の製品を設計し、性能向上を図っていくという「品質工学的な進め方」を指す。つまり安定性が先、性能が次という順序であり、こちらも精密機械など一部の製品や企業では、すでに取り組みが進んでいる。しかし、多くの企業では、性能目標達成を優先して早期に製品設計・試作評価を行い、達成の見通しがついた後にばらつき対策を行うという開発の進め方をしている。品質工学的な進め方を導入すると、この従来の開発スタイルを大きく変えることになるため、あまり手がついていない企業が多いのである。

 いまや個別の商品開発を擦り合わせ型で行っていたのでは、グローバル競争で勝っていくことができない。製品群単位での商品企画を行い、製品プラットフォームや技術プラットフォームの完成度向上に、得意の擦り合わせを生かしていく必要があるだろう。そのために、製品群企画や技術開発のプロセスをレベルアップしていかなければならないのだ。