[3]開発プロセス改善時の検討範囲について

○:開発プロジェクトのQCD目標を達成するための開発プロセスの継続的改善
△:開発プロセス改善の後工程オペレーションへの影響検討

 続いて、開発プロセス改善時の検討範囲について取り上げる。かつて開発はクリエイティブな業務であり、プロセス管理はそぐわないと聖域化されている時代があった。さすがに、今から20年前の1990年ごろにはそのような認識は主流ではなくなっていたが、開発工程の細分化や工程移行チェックポイントの具体化といった、開発プロセス管理のレベル向上の取り組みは、あまり進んでいない企業が多かったのも事実である。その後、「失われた20年」に突入し、開発プロジェクトに対するQCDの要求水準が急激に高まった上、ISO9001の認証を取得する企業が増えたことなども影響し、開発プロセス管理や開発プロセス改善を実施していくことが当たり前の状況となったのである。

 一方、開発プロセスの改善を考える際、それが後工程オペレーションへ及ぼす影響に関する検討は、不十分なままであることが多い。後工程オペレーションへの影響としては、生産技術部門による工程設計や作業手順書作成、購買部門による調達部品の確認、製造部門による製造部品の確認、販売部門による見積もり、サービス部門による保守部品の確認などのオペレーションにおける、問題発生や工数増加などが挙げられる。

 これらのオペレーションが開発プロセス(プロセス遂行にかかわる情報システムを含む)変更の影響を受けるのは当然だが、それにもかかわらず、後工程オペレーションの問題点撲滅や工数低減を開発プロセス改善の目的と位置付けて検討することは少ない。開発プロジェクトのQCD水準を向上するための改善プランが検討された後で、後工程オペレーションに大きな問題が発生しないことを確認する程度で済ませてしまうことが多いのだ。後工程部門からすると、在庫削減などの目的でサプライチェーン管理などの改革を進める際には、開発プロセスやEBOMなどの開発部門のシステムが改革の重要なポイントになることがある。このことは明確に認識しておかなければならない。