A123 Systems社のラミネート型セル
A123 Systems社のラミネート型セル
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 2012年は、数多くの車載電池メーカーにとって苦難の年となった。特に米国の電池メーカーは大きな打撃を受けている。記憶に新しいのは2012年10月に、米A123 Systems社が米連邦破産法第11条(Chapter11)の適用を申請したこと。

 一時は米Johnson Controls社(JCI)が自動車事業を買収する計画を発表したものの、同年12月の入札では、防衛事業を除く事業を中国Wanxiang Group社(万向集団)の米国法人であるWanxiang America社が2億5660万米ドルで落札した。入札には、JCIとNECが共同応札したものの中国企業の資本力に及ばなかった形である。ただし、安全保障上の問題などから中国企業への売却に反対する声明を2012年12月17日にJCIが出すなど、売却の行方は依然として不透明である。

 苦境に陥った米国メーカーはA123 Systems社だけではない。同じく米国の新興電池メーカーであるEner1社も2012年2月にChapter11を申請した。同年3月には株式公開をしないプライベート・カンパニーとして再起したものの、頼みの綱はやはり2011年に中国で合弁会社を設立したWanxiang Group社である。

 A123 Systems社とEner1社がChapter11を申請した背景には、電気自動車(EV)の販売が想定した以上に盛り上がらなかったことがある。両社共に2009年に発表した米Obama大統領の景気刺激策である「ARRA:American Recovery and Reinvestment Act」の“Buy American”政策によって多額の資金を受け、生産拠点を確立したものの、米大手自動車メーカーからの受注がほとんどなく、思惑が大きく外れたことが原因だ。実際、2011年の米国でのEVとプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の販売台数はそれぞれ約1万台と約8000台というのが実状だ(関連記事)。

 A123 Systems社の場合はChrysler社の電動車両投入の計画が大きく後退したため、現在の採用車種はベンチャーの米Fisker Automotive社のPHEV「Karma」とBMW社のHEV「ActiveHybrid 5」と「ActiveHybrid 3」への採用がある程度で、生産量はわずかだ。Ener1社も米自動車メーカーでの採用がなかった上に、傘下にしたノルウェーEVメーカーThink Global社が2011年6月に倒産したことが大きく響いた。