日本発の無線技術を表彰する「NEジャパン・ワイヤレス・テクノロジー・アワード」。本連載では、選考に先立ち、無線技術の最新トレンドを数回に分けておさらいする。まずは、携帯電話サービスを支える、移動通信技術の将来動向を紹介する。

 無線技術の将来動向を解説する連載の第4回は、携帯機器や電気自動車(EV)の非接触充電用途などで期待されている、無線電力伝送(ワイヤレス給電)技術に焦点を当てる。

MITが大きな関心を呼ぶ

 無線で電力を伝送するための研究開発の歴史は古く、100年以上前からアイデアが出ていた。特にコイル間の電磁誘導現象を利用した「電磁誘導型」の技術は既に幅広く利用されており、民生機器ではコードレス電話機や電動ハブラシなどで活用されている。

 それがここ最近、世界中のエレクトロニクス・メーカーから改めて大きな関心を集めている理由は二つある。まず、①電力を伝送できる距離が1m前後と長い「磁界共鳴」と呼ばれる技術が登場したこと。そして、②現行の電磁誘導型の送信電力をより大きくし、幅広い機器に活用しようという動きが出てきたためである。

 まず①のきっかけは、米MITのMarin Soljačić氏らが2007年に発表した、「約2m離れた60Wの電球に電力を送り、点灯させる」という実験である。これをきっかけに、長い間当たり前のように使われていた「電源ケーブル」が、将来は不要になるかもしれないという期待を集め、結果的にメーカーの研究開発を促進することになった。

 ②については、携帯電話機およびスマートフォンの普及が影響している。高性能のマイクロプロセサを搭載するスマートフォンなどでは、いくら大容量のLiイオン2次電池を備えたとしても、電池が持つ時間は短い。このため、オフィスの机やカフェなど、さまざまな場所で気軽に携帯機器を充電できる環境を実現しようと、電源ケーブルの不要な非接触充電への関心が集まっている。ただしこの際、従来の電動ハブラシなどで使っているシステムでは供給電力が小さいことから、それをより大電力化し、スマートフォンやタブレット端末などを含めて充電できるようにしようと、さまざまなメーカーが取り組み始めた。電気自動車(EV)の充電にもより大きな電力が必要になることから、大電力化に向けた取り組みが始まることとなった。