縦軸の3層:業務層、PDM層、PLM層

 「従来のPLM」は、PDM層、PLM層という従前からのCADアプローチ指向、あるいはPDM、PLMというシステム化指向である上に、製品情報の成果物統合管理指向が強く、総じていうとデータ管理指向だったといえる。その中でも業務プロセスまでは捉えられるが、CADやCAEツールに影響する範囲など狭くなりがちだった。

 それに対して、本コラムで強調してきた「これからのPLM」のコンセプトは、の特に業務層(P3LM)を中核に置きながら、企業戦略指向という目的指向で、それを遂行する業務視点から業務のプロセス・業務の手順を洗い出す。そして、それに沿った情報生成、情報活用指向で要件を整理し、目指す姿にしていくアプローチが特徴である。「従来のPLM」のデータ管理機能も当然ながら含まれるが、6区分を行き来する総合的なデータ管理の仕組みとして、要件を整理することが重要になる。

◆業務層
 P3LM層、業務プラットフォーム層とも呼ぶが、文字通り現場の日常業務の遂行層である。製品やサービスをマーケティングし、企画することから始まって、開発設計・検証・生産・市場(顧客)に提供し、結果を生んでフィードバックするまで、担当機能ごとに幾つかの業務プロセスを遂行する必要がある。これが複雑化するほど、企業戦略や事業戦略の反映ができずに、担当業務での技術の反映がせいぜいといった状況に陥りがちになる。あるいは日本の強みであった人材育成の余裕も失われ、属人的な業務遂行という、“ムラ”・“ムダ”が目立つという話を聞く時代になった。真のグローバル企業になるためには、川上機能を拠点・地域に置いて、ローカルなエンジニアを育てて自立させることが重要だが、日本での業務遂行のプロセス・手順が心もとなければそれも叶わない。

 世界の製造業は、一般的にはQMS(Quality Management System)によって認証を受け、それに準拠した仕組みで一連の業務プロセスを遂行するようになっている場合が多い。それは、誰にでも明らかな認証プロセスと、それに必要な帳票内容を規定することが主で、当然ながら設計の考え方や過去のノウハウ、知見をこの手順で活用することとは別の話である。ここを補うために、自社の特徴を盛り込んだ手順に沿って業務遂行することも重要である。ちなみに、昨今のQMS規定は急速に進化しており、業界ごとに製品やサービスについて市場(顧客)におけるライフサイクルまで規定するものが多い。

 例えば、実際に使われる市場(顧客)からの苦情などを改善した行為、それを元に再発防止策を策定した行為などをトレースできる仕組みが必要である、といった規定が増えてきている。そのような仕組み作りは、まさにP3LMと命名した通り、業務プロセス(Process)と、その中の業務手順(Procedure)に沿って生成するさまざまな文書・帳票などを、できる限り標準化し業務遂行して、マネジメントできるようにする仕組みである。次回触れるが、源流プロセスと次の商品化プロセス/製番化プロセスでは、内容もやるべきことも大きく異なってくるのである。

◆PDM層
 設計や生産技術でCADやCAEツールを扱う業務が部分的にあるが、それは業務層(の一部)である。PDM層は、設計ツールのデータ〔モデル、図面、部品表(BOMでも可)〕の仕掛り管理、成果物管理を要件とする層となる。

◆PLM層
 主要件はBOMの構築、構成管理、成果物管理(製品設計データ、図面、設計BOMあるいは生産準備BOM、必要最小限の付随ドキュメントの管理)、大日程レベルでのマイルストーン管理など、「従来のPLM」で構築してきた常識的なPLMの構築要件が含まれる。PDM層、PLM層についても、源流プロセスと次のプロセスでは扱いが大きく異なるので、これについても次回述べたい。