「今後は人手に依存した生産システムからの脱却が必要である」。そうした問題意識から、パナソニックが近年推進しているのがパラレルリンクロボットを使った生産革新である。

図●パナソニックのパラレルリンクロボット「AP-3310A0001」
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 詳細は本連載の中で解説していくが、パラレルリンクロボットは、可動部でなく固定部に全ての動力源(モータ)を配置するため、可動部を軽くして動作を高速化しやすい上、モータにも出力の小さなものが使えて価格を抑えやすい()。しかも、動作自由度を6と高められるので、人手で実施している複雑な作業の多くを代替し得るポテンシャルを持つ。そのため、生産効率を高めたり生産コストを低減したり、品質の安定化を図ったりするのに役立てられる可能性が高いのだ。我々は、こうしたパラレルリンクロボットの利点に目を付け、次世代生産システムのキーテクロノロジーの1つとして、生産現場への適用を図っている。

 では、今なぜ、人手に依存した生産システムからの脱却なのか--。それは、以下のような事情からだ。

高まる中国での製造リスク

 第1に、過去最高水準の円高が長期化していることが挙げられる。グローバル競争に勝ち残っていくには、生産コストのより一層の低減が必要とされ、国内拠点においては人件費の抑制が求められてきているのだ。その結果、自動化技術を駆使して省人化を図るなど、人手に依存した生産からの脱却が必要となっている。

 第2に、国内拠点においては、そもそも長期的に労働力を安定して確保していけるかという問題も存在する。今後、日本の人口は年々減少し、2035年には現在と比べて13%減り、1億人レベルとなるとされている。中でも減少が顕著なのが、就業可能な15~59歳の労働者人口である。労働者人口は2035年には全体の半分以下となり、60歳以上が総人口の42%を占め、日本での労働力確保は極めて厳しい状況になると予測されている。