それに対して、判事は11月2日付けで、多大の資源を費やしてFRAND料率を決定しても、Apple社がその料率に従う意思がない限り、両者は再び同様の訴訟を起こすことになり、裁判の目的が達せられずに公益を損なうことになる、と判示した。最終的に、トライアルはその当日、開始直前に取り止めとなると同時に、裁判も破棄された。その結果、必須特許に係わる争点についての判断が示されないまま、Apple社のすべての請求が棄却されることになった。ただし、その後、同法廷ではApple社の提出書面から両者が拘束力ある調停手続きに入る意思が確認されたので、Apple社の請求棄却は撤回され、棄却ではなく却下の判決に変更されて、調停による両者の紛争解決の道が残された。

判決は出ても争点は先送りに

 Apple社対Android訴訟において必須特許問題が争点となって米国で審理が続いている事件としては、米ITC(International Trade Commission; 国際貿易委員会)における韓国Samsung Electronics社対Apple社 (調査番号337-TA-794)、米CAFC(Court of Appeals for the Federal Circuit; 連邦巡回控訴裁判所)におけるApple社対Motorola社控訴審(番号2012-1548, 2012-1549)および米カリフォルニア州北部地区連邦裁判所におけるApple社対Samsung社(事件番号11-cv-01846)がある。

 本稿を執筆中の11月14日(米国時間13日)に、当のカリフォルニア州地裁で判決が出された。結論から言うと、残念ながら今回もまた、争点についての判断は示されなかった。この1846事件は、陪審裁判でSamsung社に対して10億米ドルを超える賠償金の支払いを命じた評決が出されたことで広く知られている。この陪審裁判後に両者から様々な訴えが出されているが、その内の一つが、Apple社から出されたSamsung社による標準化過程での特許開示およびFRANDライセンスに係わるIPRポリシー義務違反の問題であった。