そこでのApple社の主張はこうである。1846事件でSamsung社は、Apple社が必須特許2件(7,675,941および7,447,516)を含むSamsung社特許5件を侵害していると主張した。これら必須特許2件は、第3世代(3G)移動体通信方式の一つであるUMTS(Universal Mobile Telecommunications System; ユニバーサル移動体通信システム)規格に関する。

 このUMTS規格は、ETSI (European Telecommunications Standards Institute; 欧州電気通信標準化機構)を含む標準化6団体によって構成される3GPP(3rd Generation Partnership Project; 第3世代パートナーシップ・プロジェクト)で標準化されたものだ(日本の電波産業会および情報通信技術委員会も3GPPのパートナーである)。

 Samsung社は’941特許を2005年5月4日に初めて韓国で出願した。そして、その出願の1週間後の5月9~13日に開催された3GPPワーキング・グループ会合において、’941特許技術に関する技術提案を提出するとともに、その提案技術をUMTS規格に含めるための正式な変更要求(Change Request)を提出した。これは数日後にワーキング・グループによって承認された。結局、Samsung社の技術提案を含む標準仕様書の改訂は同年6月1~3日に開催された総会(plenary meeting)で承認され、最終的にUMTS規格のRelease 6に含まれている。

 しかしながら、Samsung社が’941特許ファミリをETSIに初めて開示したのが2007年8月7日であった。実に、同社の技術提案が採用され、標準仕様書に組み込まれてから2年以上経ってからのことだった。’516特許についても、時期は2004年から2005年に遡るが同様の手続きが取られている。実際に’516特許ファミリをETSIに初めて開示したのは2006年5月16日で、同社提案が採用された2005年6月からほぼ1年後のことであった。