ホンダは2012年4月、日本向け軽自動車の開発機能を、栃木県・芳賀町の本田技術研究所から軽自動車の生産拠点である鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)に移転した(Tech-On!の関連記事)。鈴鹿製作所内の1室に軽自動車の設計、購買、生産技術、製造に所属する従業員を集め、そこで互いの意見をぶつけながら開発できる環境を整えた(図1)。いわば「大部屋連携」である(『日経ものづくり』2012年8月号の特集「グローバル時代の生き残りをかけた大部屋連携」の概要)。

(図1)鈴鹿製作所内にある「大部屋」
設計、購買、生産技術、製造の4部署が集まるこの場所に営業担当者も頻繁に足を運ぶ。

 自動車メーカーは従来、開発拠点と製造拠点を別の場所に設置するのが一般的だった。開発に携わる技術者を複数ある製造拠点に分散させるよりも、1つの開発拠点に集約させた方が効率的に開発できると考えてきたためだ。中でもホンダは、開発拠点を1カ所に集約させるだけではなく、本社とは会計も管理も異なる別組織としてきた。創業者の本田宗一郎氏が「技術者は世間の浮き沈みに関わらず技術と真摯に向き合うべき」との信念を持っていたからである。

 そのホンダが新車開発機能の一部を鈴鹿製作所内に移したのだから(あくまで「本田技術研究所四輪R&Dセンター鈴鹿分室」という形だが)、自動車業界におけるものづくり体制の重要な「変化点」と見ていいだろう。