日本発の無線技術を表彰する「NEジャパン・ワイヤレス・テクノロジー・アワード」。本連載では、選考に先立ち、無線技術の最新トレンドを数回に分けておさらいする。まずは、携帯電話サービスを支える、移動通信技術の将来動向を紹介する。

 無線技術の将来動向を解説する連載の第1回目は、携帯電話やスマートフォンのサービスを支える移動通信技術に焦点を当てる。無線通信業界の言葉では、無線WAN(wide areanetwork)に相当する。本連載では次回以降、無線LAN(l ocal areanetwork)、そして無線PAN(personalarea network)の技術動向を順次紹介していく。

3GPPが動き出す

 無線WANの技術動向を大きく左右するのが、「3GPP(The 3r dGeneration Partnership Project)」の動向である。3GPPは、第3世代移動通信方式(3G)以降、世界の携帯電話サービスの標準化をリードしてきた。この3GPPが策定する仕様(リリースと呼ばれる)こそが、その後の移動通信技術の趨勢を決めると言っても過言ではない。

図1 LTEが普及、ポストLTE\-Aも<br>今後の移動通信技術の方向性をまとめた。移動通信事業者にとっては、伝送容量拡大が最優先課題となる。この際には、スモールセル基地局や高度の干渉補償技術などが求められる。2010年代後半には、最大データ伝送速度が1Gビット/秒を超える。(図:日経エレクトロニクス 2012年8月20日号、p\.60の図1から)
図1 LTEが普及、ポストLTE-Aも
今後の移動通信技術の方向性をまとめた。移動通信事業者にとっては、伝送容量拡大が最優先課題となる。この際には、スモールセル基地局や高度の干渉補償技術などが求められる。2010年代後半には、最大データ伝送速度が1Gビット/秒を超える。(図:日経エレクトロニクス 2012年8月20日号、p.60の図1から)
[画像のクリックで拡大表示]

 3GPPは間もなく、LTEの後継仕様である「LTE-Advanced」に関する追加規定を盛り込んだ「リリース11」の標準化を終える。そしていよいよ、その後継仕様の「リリース12」(2014年後半に策定終了予定)、さらにその先の「ポストLTE- Advanced」の構想などの議論を始めようとしている(図1)。LTE- Advancedは2015年ごろの実用化を、そしてリリース12やポストLTEAdvancedに関しては、2016年~2020年頃の実用化を想定する。

 以下では、「2013~2015年」「2016~2019年」「2020年以降」という三つに分け、3GPPの議論内容から推定される将来シナリオと、求められる技術を示していく。