土佐 CGには、とても早い時期に触れられたと思います。最初に使ったコンピュータは、米DEC社の「VAXシリーズ」や「PDPシリーズ」でした。3次元CGを制作するソフトウエアが出てきた時代でした。

 それで、ソフトウエアの扱いや、プログラミングをよく知っている会社の先輩とかに教えてもらった。だから、ほぼ独学ですよ。ただ、報道系のCG制作は自分がやりたい表現の世界とは違うと思っていました。コンピュータについて覚えなければならないこともたくさんある。これを続けていたら消耗してしまうなと感じていました。

加藤 インタビューの前に「土佐さんは芸術家ですよ」という話を聞いていたので、「華麗なる技術者ではないかもなぁ」と思っていたんです。でも、話を聞いていると、間違いなく技術者ですね(笑)。

コンピュータで感性を表現したい

加藤氏
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土佐 そうですか(笑)。確かに、CG制作をしていた時代は、半分はプログラミングをやっていましたね。でも、私にとっては、アート作品を制作することの方がやはり楽しい。武蔵野美術大学で講師をしていた時代には、「プログラミングができる」という理由で、どちらかと言えば技術系の話を教えていることが多かったのです。おかしいですよね。

加藤 いや、おかしくないですよ。だって、理工系の学校に通ったからといって、優れたコンピュータ・プログラマーになるわけではありませんから。逆に、文科系の学部出身者に天才プログラマーがいたりしますよね。

土佐 おかしいのは、大学の方ですよ(笑)。本当は、映像アートについての講義をするはずだったんですよ。器用貧乏なところがあるのかもしれません。自分では、あまり器用だとは思っていないですが。

加藤 そういう経験が、今の土佐さんのベースになっているんですね。コンピュータに出合って、表現の自由度が増えた。

土佐 本当にやりたいことがたくさんありました。コンピュータはシミュレーションができるので、やり直しが何度でもできる。感性をコンピュータで表現したいと思いました。論理的な話ではなく、自分が感じていることを。もっと若かったら、ゼロイチの2進数で論理的に動く今のコンピュータとは別の原理を基盤にした、新しいコンピュータを作りたいと思いますもの。

(この項、次回に続く)