「我々中小企業は今、『医療』に関連したテーマでなければ、銀行からの融資を受けにくいんですよ」─―。

 2012年夏、東京都大田区にある、電子部品の自動組立機械や検査装置などを手掛けるものづくり企業「TSS」を訪ねた際、オーナー社長はこのように語った。

 TSSは2012年、新規事業となる医療機器分野に参入。ある製品で薬事認証を取得した。さらなるラインアップの拡充を図るべく、現在、新製品の開発を加速している。

ムーブメントが起き始めた

宮田喜一郎

 2012年は、医療・健康・介護分野への新規参入を果たした、あるいは参入を目指す、ものづくり系の企業が相次いでいる。中小企業だけではなく、大手企業も同様だ。

 ソニーは2012年9月末、オリンパスとの業務・資本提携を発表(関連記事)。同年12月に、外科用内視鏡などを開発する合弁会社を設立する。パイオニアは同年10月末、大塚メディカルデバイスと医療用内視鏡カメラの共同開発を目的に業務提携することを発表した(関連記事)

宮田喜一郎

 さらにセイコーエプソンは2012年8月、医療・健康分野に参入することを発表した(関連記事)。村田製作所は同年9月、福祉用具メーカーと共同で介護ロボットを開発したと発表。2014年度に本格販売を目指す(関連記事)

 これらは一例に過ぎないが、医療・健康・介護といった分野を、自らの企業が保有する技術を生かす中核事業にしようとする動きが加速している。大きな“ムーブメント”は、確実に起き始めた。