貿易統計データを用いて生産海外シフト動向を分析する

 リーマンショック以後、円高対策やさらなるコスト削減のために、生産の海外シフトを進めている企業は多い。しかし、単純に生産を国内から海外へ移しただけでは、国内の雇用が失われて空洞化していくだけだ。付加価値の高い業務プロセスを国内に残し、相対的に付加価値が低下した業務(特に日本で実施する必要がなく、低賃金のエリアで実施する方が得策である業務)を海外に移転するという戦略をとる必要がある。この戦略については、次回の記事でスマイルカーブを用いて考察することとして、まずはリーマンショック前後の海外シフトの動向を、統計データを使って分析してみたい。

 海外シフトの動向を見るための経済統計データにも様々なものがあるが、ここでは財務省が公開している貿易統計を主体として、分析を行うことにしよう。

 貿易統計データの中でも、「貿易特化係数」という指標がある。貿易特化係数は、国の輸出競争力を表す指標の1つであり、「国際競争力係数」や「輸出特化係数」とも呼ばれる。品目別の輸出入総額のうち、輸出の割合が大きくなると値が大きくなるものだ。その算出方法は以下の通りである。

「貿易特化係数」=(X-Y)/(X+Y)
X:輸出額 Y:輸入額
※参考文献:金融情報サイト「iFinance」

 この係数では、輸出過多の状態になると値はプラス1に近づき、輸入に依存した状態ではマイナス1に近づく。また、輸出と輸入がバランスした状態では値は0となる。
 仮に、国内に流通する海外ブランド製品の割合がそれほど変化していないにもかかわらず、貿易特化係数が小さくなった場合、生産の海外シフトが進行し、逆輸入が増加したと考えることができる(コンピュータや家電製品がこれに該当する)。