採択論文数の地域別比率
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Intel社の名前が見当たらない
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 最先端の半導体回路技術が集う国際会議「IEEE International Solid-State Circuits Conference(ISSCC)2013」が2013年2月17~21日に米国サンフランシスコで開催されます(関連記事)。

 採択論文数の地域別比率を見ると、アジアが前回(ISSCC 2012)比4ポイント増の40%とトップを維持し、北米(同2ポイント増の36%)や欧州(同6ポイント減の24%)との差を広げました。先端半導体の開発でアジアが世界をリードする構図がいよいよ鮮明になってきたといえます。

 一方、組織別の採択論文数ランキングを見ると、韓国KAISTが12件でトップ、次いでベルギーIMECが9件、米IBM社、米Massachusetts Institute of Technology(MIT)、オランダDelft University of Technologyがそれぞれ8件となっています。

 ここで、ちょっとした異変に気づきました。例年上位に名を連ねている米Intel社がどこにも見当たらないのです。前回、Intel社の採択論文数は13件でランキングは首位でした。今回は、筆頭著者(First Author)がIntel社になっている論文が1件しかなく、採択論文数3件以上のランキングから姿を消しています。マイクロプロセサのセッションでは、Intel社からの発表が前回の8件から0件に減りました(関連記事)。

 本来ならば、2013年に投入予定のマイクロプロセサ「Haswell」(開発コード名)に関する発表があったはずです(関連記事)。ISSCC委員の方に話を聞いたところ、新しいプロセサに関する論文群が準備されていたそうなのですが、「製品出荷前ということで、直前になって投稿が差し止められた」(ISSCC委員)とのことでした。

 このような動きはマイクロプロセサに限った話ではありません。今回はメモリのセッションでも、韓国Samsung Electronics社の論文が姿を消しました。Samsung社のISSCCにおける全投稿論文数は3件と、前回の10件から大幅に減っています。たまたま製品開発サイクルの谷間だったために、投稿するものがなかったとの声もありますが、トップランナーであるIntel社やSamsung社にとっては、ISSCCで無理に投稿する必然性がなくなってきたのかもしれません。競合他社に秘密を漏らすくらいなら、学会発表なんてしない方がいいという判断があったのでしょうか。

 今回のような判断は企業の方針というよりは、「ボスの個人的な方針だったりする」(ISSCC委員)との指摘もあり、今後も続くかどうかは定かではありません。ただ、半導体技術に関する最新の情報が、公の場であまり発表されなくなるというのは、残念なことです。ISSCCは今回で60周年を迎え、半導体産業の長い歴史の中で一つの区切りを迎えます。今後、半導体産業が成熟産業として閉鎖的な方向に進むのではなく、学会での活発な議論を通じて技術革新を続けていくことに期待したいと思います。

 なお、日経エレクトロニクスでは2013年1月7日号でISSCCのプレビュー解説を掲載する予定です。ご興味のある方はご一読いただけますと幸いです。